佐々木倫子先生の新装版「動物のお医者さん」第3巻レビュー「ワタシは!「古くなったクリスマスケーキ」じゃないッ!」
第3巻では僕がスキなH大学獣医学部博士課程の
菱沼聖子が2度主役を張っている。
菱沼は現在25~6歳。
ワザワザ年齢を書くのは
これから書くレビュー内容に直結しているからだ。
教授同士の自分の講座の学生の結婚の話となり
菅原教授に師事して博士課程で学ぶ菱沼の話となる。
「菱沼くん(の年齢)は?」
「博士課程2年だから25~6だな」
「クリスマスケーキならちょっと古くなったヤツだな」
「古くなったショートケーキはイチゴを取り替えるそうだ」
「アンタ(菅原教授)が(ショートケーキみたいにアレコレ)面倒見てやらないと
何時までも結婚しないで講座に居つくかもしれないよ」
…とまあおよそ信じられん会話が続く。
この…「女の結婚適齢期」を「クリスマスケーキの賞味期限」に見立て
24歳=12月24日のクリスマスケーキ…適齢
25歳=12月25日のクリスマスケーキ…危機感を持つ必要がある
26歳=12月26日のクリスマスケーキ…目も当てられない行き遅れ
とする考えは佐々木先生の独創ではなく現実にあり
僕が入社した際に同期だった女性社員は
「ワタシはクリスマスケーキじゃない」
と大変に憤っていた。
重要なのは男が25~6歳となっても
「古くなったクリスマスケーキ」と中傷される事は絶対になく
明確に女だけを対象とする差別である点である。
また本巻には菱沼の就職活動の話が収録されていて
菱沼は
1.博士課程であること
(=高齢&実力に見合った高い給料を払わなくてはならない)
2.女であること
(「女は結婚に逃げる」から信用出来ないという考えが本当にあるのだ。)
の2つの点から就職説明会で,企業担当者から
一切質問されず,また一切相手にされず,
企業担当者が質問し相手をするのは
博士課程でない(=若い&実力が低いから高い給料を払わなくていい)
男子学生(=男は結婚に逃げないから「安心」)
だけという年齢&性別による二重の差別を受けているのだ。
菱沼の研究者としての能力がまるで買われてない訳で
「ワタシは結婚なんかに逃げないわよ!」
との叫びがこだまして話は閉じる。
「動物のお医者さん」が多くの愛くるしい動物の
愛くるしい所作に萌える漫画と思ってるなら間違ってるよ。
謂れの無い中傷と差別に憤る菱沼の怨嗟に満ち満ちた作品でもあるのだ。
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