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日記後編:精神保健福祉士が精神科に入院してみた

5.呪縛と解放の入院生活

前回の件は、その後勇気を出して看護師さんに率直な気持ちを伝え、もやもやを引きずらずに済んだ。ありがたや。

最初の3日ほどは相部屋がしんどすぎて「差額料を払ってでも個室に移りたい(;_;)」と泣いていたけれど、入院して4日ほど経つと、入院生活にもだいぶん慣れて心も落ち着いてきた。
環境の変化に弱いと思っていたが、意外と順応性あるじゃん、自分。
(とは言え、やはりいろいろあって部屋は変えてもらった。)

病院では、なるべくスマホを触らないように気をつけた。

家ではいつもスマホ片手にごはんを食べて、着替えや洗顔すら動画を見ながらやっていた。
常にマルチタスクで、自分がいま何を食べ何をしているのか、よく分からないような生活を送っていた。

ここでは、セカセカする必要はない。有意義な時間を過ごそう、と動き続ける必要もない。
心を整えるように、一つひとつの動作に集中し、丁寧な所作で行うよう心がけた。

(と言ってもこれもスマホで書いてるし、1日のスクリーンタイムは10時間超えである!)

入院6日目、担当医の診察を受けた。

クリニックの診察時間はいつも3分足らずだが(それでも、これまで通った4院の中ではもっとも長いし丁寧だ)
入院中の診察では、なんと20分以上対話を重ね、ともに考えてくれた。
構ってちゃんな僕はその事実だけで嬉しい。

看護師さんも、定期的に病棟生活について困り事がないかヒアリングをしてくれるし、目標設定をともに考えてくれる。

医療・看護の質はとても高いように感じた。
ただ、入院中に「対人不安感」は増悪した。

「ケアされる側」に立っていると脳が認知していることで、対人不安の大きな原因である「見られてる意識」が一時的に高まったのだと解釈している。

とは言え心因性発熱や機能性腹痛は治まり、希死念慮や自傷衝動も落ち着いて気分の波も穏やかになってきたため、次の診察で特に問題がなければ、週末あたりに退院したいと担当医に申し出た。

*任意入院なので、退院したいと希望すればいつでも退院する権利が患者にはある。(ただし指定医が必要と判断すれば72時間以内に限り退院を制限できる。)

6.対話と退院

同室の子と仲良くなった。
自分の療養に集中するためになるべく他の患者さんとは関わらないようにしていたが、同世代で、性格に共通点の多かったその子とは自然と仲良くなった。

病室を隔てるカーテンを半分開けて、夜も朝も語らいあった。

自身の性格について、生き方について、病気について、家族について、腕の傷について、心の傷について、生き甲斐について、学問について、学びについて…

あの病室は、精神科病棟の一室であり、アカデミックな場であり、ピアサポートの場だった。

帰り際、その子は鍵のかかっている外への扉の前まで見送ってくれた。

「また会おうな」

握手を交わして、看護師さんにお礼を伝え、病院を後にした。

「また疲れたら、ここに休みに来ます。」

使用用途::不登校関連書籍の購入、学会遠征費など