【ショートショート】チャリンチャリン太郎【#毎週ショートショートnote】

「おいおい千円ぽっちかよ！」

「オラ、飛んでみろよ！」

「早くしやがれ！」

ヤンキーたちに囲まれて僕はその場でジャンプする。

「うぅ……」

チャリンチャリン

ポケットの音をヤンキーたちは聞き逃さない。

「まだ持ってんじゃねぇか！」

「小銭でも構わねぇ、よこしやがれ！」

「そんな……」

入学して早々カツアゲにあうなんてツイてない。

これからの高校生活を暗示しているかのようだ。

そのとき声がした。

「人が呼ぶ、悪が呼ぶ、チャリンチャリンと俺を呼ぶ！」

抑揚のある高い声。

「この声は！」

ざわめくヤンキーたち。

「チャリンチャリン太郎、参上！」

見ると廊下の向こうに生徒が一人立っていた。

プラスチックのお面をつけて決めポーズをとっている。

「チャリンチャリン太郎だ！」

「逃げろ！」

小銭をまき散らして逃げていくヤンキーたち。

「……」

チャリンチャリン太郎と呼ばれた生徒は散らばった小銭を拾うと僕に握らせると、

「さらば！」

そう言って去っていった。

これが僕とチャリンチャリン太郎の出会いだった。

✒あとがき

読んで下さってありがとうございました！

こちらの企画に応募する作品として書きました。

チャリンチャリン太郎は実は女の子で高校卒業後に紆余曲折を経て主人公と結婚するところまで妄想しましたおつかれさまでした。