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村崎懐炉短編小説集

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短編小説をまとめました。僕は不思議な話や甘い恋の話が好きなんです。
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2019年8月の記事一覧

短編小説「蟹」

「蟹」

「恃(たの)もう」
一日の学課を終えて、賀川豊彦は通町の教会を訪ねた。全く以て散々な一日であった。
「名門徳島中学の名が廃る。」
豊彦は憤慨していた。
「ドウシマシタカ」マヤス神父が尋ねた。
其れに対して豊彦は「うむ」と答える。
「中学の学課に軍事教練があるのだ。」
憮然として豊彦は言った。豊彦は中学に「飛び級」で入学したため、他の生徒に比して年齢が幼い。体躯も小さいため身体能力が格段に

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短編小説「外骨格人間とフレグランス」ディレクターズカット

ある群島に潜伏しながら世界秩序の再構築とそれなりの世界平和を目論む秘密組織によって僕は外骨格人間にされてしまった。

この秘密組織は群島内外の寄付金によって運営される非公認市民団体であり、非公認であるが故に市民団体なら当然支給されるべき市町からの活動助成金も受給できない。そのため慢性的な活動資金欠乏に悩んでいる。彼らの活動(主にブログや街頭演説)は資金化出来ないため、組織は貨幣経済に疎く、故に

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