見出し画像

草むしり


さあやるぞ、と
勇み足で庭へ出る
我が子の具合を観察し
そして根元に目をくれる

懲りない奴等め 今日こそは
軍手に穴の空くのも気に留めず
ぶちりぶちりと草を抜く
我が子のためと草を抜く

これは私の仕事なのだ
動けぬ我が子のためならば
苦手な虫をも厭わない
多少の雨にも濡れてやる


そうしてときどきむなしくなって
ふと手を止めて座りこむ


我が子のためと理由をつけて
数多のいのちをむしりとる
私は一体何なのか
愛を選んでむしるとは

わたしが博愛の者ならば
どんな荒野も愛せただろう
どんな雑木林も愛せただろう

我が子のためと理由をつけて
むしりとるのは数多のいのち
ホントは立派なものでなく
己がため手を働かすのみなれば

好きも嫌いも区別せず
広い心で緑を眺め
そっと触れたら良いものを


ハアと耽(ふけ)って寝そべって
揺蕩(たゆた)う雲を目で追うそばに
また這い茂る草がある

ちっぽけな私のことなど知らんぷりで

ごめんと思う 私の偽善も知らんぷり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?