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可能性未知数な最年少、安部早馬は面白い奴だ。

** 安部早馬は、逞しい役者だ。 **

 安部早馬。あべちゃん。アクタボン最年少。
 不思議な愛嬌溢れる、みんなの弟。

 
 あべちゃんは、どこか読めないところがある。稽古場でも、無口に座っているかと思えば急にひとりで笑い出したり(こわい)、いきなり演出をつけているときの僕の誇張物真似を披露してきたり(ちょっとむかつくけど面白い。いつか公に披露してほしい)、出会ってからもうすぐで約二年が経つけれど、僕はいまだに安部早馬という生物が日々なにを考えて生きているのかわからない。

 独特な間を持つ彼はたまに、時空を歪ませる。

 なにを言っているのかよくわからないけれど、僕たちにもよくわかっていないのだからしかたがない。

 とにかく、面白い奴だ。


 安部早馬のすごいところは、その「動じない」精神だ。あべちゃんの本番でみせる舞台度胸は、目を見張るものがある。

キャラクターピックアップ公演『未知標奇跡 編』
撮記取 喜六(さつきどり きろく)役

 思い出すのは、旗揚げ公演。

 本番で、稽古の時点にはなかった安部早馬(character:科学者1)が2分ほど一人で舞台を回す時間があった。僕はそのとき音響ブースから、この演目がどう運んでいくのか内心ハラハラとしていたのだが──その心配は、杞憂だった。

 アクタボンでの演劇がほとんど初めての演劇新人であった安部ちゃんが、一人で舞台を回したのだ。ちゃんと次の場面に繋がるように、キャラクター性や、付随する文脈を守って。

 そのとき僕は、安部早馬に救われた、と思った。実はこのときのこの経験が、ともすれば独りよがりの創作に陥ってしまいがちだった僕のいまのスタンス(みんなで創ろう、アクタボン!)に影響を与えたのかもしれない。

 安部早馬は、軸がしっかりした人間なんだと思う。みんなでいるとよくわからない奴だし、頻繁に時空を歪ませるけど、帰りの電車で2人で喋るときの彼は落ち着いていて、僕に色んな気付きを与えてくれる。

 キャラクターについても、真剣に意見を交わし合う。

 なにを考えて生きているのかわからないし、ひょっとすると「なにも考えてないんじゃないかな?」と不安に思ってしまうこともあるけれど。

 芝居や演技や、舞台のことは、とてもよく考えてくれている。

 安部早馬は、これから面白い役者になっていくと思う。独特の間しかり、舞台度胸しかり、意外と鋭い読解力しかり。

 だからあべちゃんには、人の解釈の度合いによって見え方が異なりやすいキャラクターを演じてみてもらっている。

 今回彼に与えた馬鹿零も、もちろん安部早馬というアクターの個性から作り上げたキャラクターではあるのだが、実際にあべちゃんが演じることによって脚本段階で想定していたものとはまたちょっと違った一面を覗かせている。

 本番を重ねる毎に著しく成長するあべちゃんの舞台、乞うご期待!

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