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新卒採用の役割と成功条件の考え方

新卒採用担当者、あるいは新卒採用実施を検討している方はこのような悩みを抱えたことはないでしょうか。

◾️ 新卒採用でよくある悩み
・採用活動は楽しいが、事業貢献の実感を得られない
・新卒採用を実施したいが、投資対効果を定義できない

私は新卒で採用配属されたうちの1人であり、このような悩みを抱えて業務をしていた時期もありました。

「新卒は文化を体現する人材だ」「新卒だからこそ経営を担えるポテンシャルを持っている」
このように最もらしい話を聞くことも多かったですが、果たして本当にそうなのか?とずっと腹落ちしていませんでした。

なぜこのようなことが起きるかという問いに対しては色々な視点があると思いますが、下記のことが代表的に要因として考えられると思います。

◯理由①:時間軸が長くイメージしづらい
新卒採用の最大の特徴の1つとして時間軸の長さがあげられます。採用活動をしてから入社するまで1年半〜2年程度かかるだけでなく、そこから入社研修、現場配属、配属〜独り立ち、までを考えると3年程度かかる可能性があります。
採用のベッドカウントは埋めて、色んなステークホルダーに感謝される一方で、自分の活動が事業貢献に直接結びつかないように感じるのはこれが理由の1つといえます。

◯理由②:価値の定義/言語化ができていない
中途採用と新卒採用を比較した際に、経験やスキルが豊富にある中途採用では、内定承諾後数ヶ月で成果が出るケースも多く、自身の採用活動と事業貢献が結びつくイメージがあります。
そのため、採用目標達成数=成功、1年以内の事業貢献度=成功、のように価値を定義しやすい場面も多いでしょう。

一方で、新卒採用は入社までの時間軸の長さに加え、スキルと経験が乏しいケースが多く、短期的にも長期的にも何ができれば◯なのか?に対する答え=価値の定義が言語化されてない場合があります。

しかし、果たして、新卒採用では短期的な成功を定義することはできないのでしょうか?中途採用の成功は短期的な事業貢献のみなのでしょうか?

答えはnoだと思います。まずは新卒採用における成功の定義を考える上で、会社の経営者になったつもりで、事業成長における役割考えてみたいと思います。

事業成長における新卒採用の役割

①未来の競争優位性を低コストで築くことができる

会社がマーケットで競争力を保つためには、優秀な人材の調達と、最大限力を引き出す環境を整備する、辞めない環境を作ることが重要です。

となるとその入口である人材調達に各企業は予算、人的コストなどあらゆるものを投入します。数年前から日本の雇用の流動性は市場構造の変化やダイレクトリクルーティングの台頭によって、徐々にその傾向は推進されてきました。

■採用競争の激化

一社で勤め上げる時代から複数の選択肢を考える時代に変化すると、色んな企業が同じパイを狙い合う戦いになります。

外資系ITや金融などの報酬レンジは国内企業の水準より高く、仮に接触できたとしても年収で競り負けて獲得できないケースもあります。また、商社など10年以上いて当たり前の会社だと、市場に構造的にでてきづらい可能性が高いです。

■優秀な人材はマーケットに出てこない
若手の採用であっても、特に優秀な人材であれば在籍している会社から多数の機会が与えられ(先述した環境の整備)、年収もどんどん上がっていくと思います。

そのため、在籍会社で活躍する人材は自社で満足して市場に出てきにくい構造になります。

新卒採用の場合、ある程度同じ時期に大多数の候補者が就職活動を始める大きな流れがあるため、そういった人材に接触し採用できる可能性が相対的に上がります。

経験やスキルを持ち合わせており、高年収を提示しないと採用できない人材を、タイミングが新卒というだけで採用することができるのです。

それは、中長期の視点で考えたときに、中途採用では実現できない企業の未来の競争優位性を実現できるだけでなく、コストの観点でも割安に採用ができるのです。

②育成機会を通じて採用対象拡大やマネジメント層の発掘を実現できる

人材調達の次は、彼らが活躍できる環境を構築することが重要だとお伝えしました。そこで、新卒採用をすることがどのように事業成長に寄与するのかについて考えてみたいと思います。

経験やスキルがない(経験はないがスキルはある)方を受け入れると、スキル開発や挑戦機会を提供する必要があります。それらを通じて個のスキルを伸ばし、自律的にチームに貢献する人材を育てていきます

このスキル開発や挑戦機会の提供モデルを考えること、モニタリングすること、改善し続けることのサイクルを回すことが事業成長と結びつくと考え値ます。

中途採用だと考えることがなかった(背景:スキルと経験をベースに採用するため期待値が異なる)育成や機会提供のモデルを構築することで、1つの受け入れ〜即戦力化の型を作ることができます。

その型によって経験の浅い第二新卒を受け入れが実施できる可能性が広がります。あるいは育成機会をメンバーに任せることで、擬似的なマネジメント経験を積むことができます。

■マネジメントの疑似体験
ポテンシャルはあるが経験はない(しかし中途として経験を積むと採用難易度が高い)人
を受け入れることは先述した通り企業の競争優位性に繋がり、また育成機会を通じて未来のマネジメント層の発掘や厚みを持たせることもできるでしょう。

③現場を採用に巻き込むことで帰属意識を醸成し離職率を下げる

採用は採用担当だけで完結するのではなく、常に現場のメンバーを巻き込む必要があります。採用活動にあらゆる人を巻き込むことに事業上のメリットがあります。

採用はフロント、つまり企業の顔になる部分なので、会社の中の誰でも協力を依頼して良いというわけにはいきません。

特に学生の候補者は職務経験がない方が多く、彼らの背景に想像力を膨らませながらロールモデルになり得る人材をアサイメントする必要があります。

■アサインすることで得られる効果
そのため、ここに選ばれること自体が一種の期待感の醸成に繋がり、辞めにくい環境を作ることができます。

また学生の候補者から入社理由を聞かれたり、会社やキャリアについて質問を受けることで、内省をする機会に恵まれます。内省を通じて自身の業務と紐づけることで、業務へのパフォーマンスの向上にも寄与します。

◯新卒採用の価値まとめ

事業成長や組織運営の観点から、新卒採用がもたらす価値についての事例を3つあげました。

これはあくまで個人的な意見、かつ少ない切り口や時間軸から考えた回答ですが、それだけでも採用活動を通じて短期的にも長期的にも経営に大きなインパクトを与えていると実感することができるのではないでしょうか?

採用担当としてヘッドカウントを揃えることは重要ですが、その観点だけで新卒採用の価値を定義する必要はなく、より広いスコープで新卒採用を捉えることが重要だと思います。

新卒採用で外せないリスクの側面  

成功や価値を考える上で、良い面もあればリスクの面も必ず存在します。今回はそこについても少し触れたいと思います。

投資回収コストに時間を要する

業界規模にもよるが一般的な企業だと3年前後、商社などの企業だと10年程度時間を要する可能性が高いことが考えられます。

こちらのツイートが非常に参考になり、P/Lで自身のコストがどう支払われ、どう回収されるかを考える視点をもつのは重要です。

また、個人ではなく新卒入社年度の全体として投資回収コストを考える方法もあります。成功や価値を定義するうえでは、このコスト回収にどれだけ、どのように耐えれば◯なのかをチームとして定義しておく必要があります。

◾️新卒入社年度全体で投資回収コストを考えた場合
早期退職者が毎年複数名出ることを考えると、その回収しきれなかったコスト分を残った新卒入社者が背負う形で会社が考えれば、より残ったメンバーに大きな利益を出してもらう必要がある

一方で下記のように、業界の特性やトッププレイヤーの出現など、投資回収期間が短いケースもあります。

このような場合では、比較的中途採用に似たケースかつ特殊解ではありますが、そういった新卒採用が事業上理に適っており◯だ、と定義すれば、そのように捉えることもできます。

◾️投資回収期間が短いケース (〜3年)
・早期から結果を求められる外資系金融やIT
・事業会社などで早くから大きな成果を出し部長や経営層になるケース(あるいは中途でもできない大規模な改革を実行したケース)
・小規模なベンチャー企業でインターンから勤務していたケース

新卒採用の成功をどのように決めるか

新卒採用の成功を考える具体例

新卒採用は短期のヘッドカウント充足、あるいは長期の活躍タイミングなどいろんな捉え方ができます。

短期と長期の時間軸、定量的な目標設定+OKRなど状態を定義するような定性的な目標を設定するのも選択肢としてありだと思います。

また場合によっては、関係するステークホルダーや影響範囲をどこまで広げるか?という視点で考えるのも良いと思います。

◼︎具体例
【短期】
・1年以内に採用目標数を達成する
・1年以内の採用目標数の中で女性の割合 or S評価の割合を10%達成する

【長期】
・社員が採用活動に関与できるプロジェクトを3年以内に仕組み化する
・採用した候補者が3年以内にマネージャー昇進率を30%を目指す
・新規事業責任者を3年以内に1名輩出するために、育成チームと抜擢手法や育成モデルを型化する

管理できる影響範囲に成功条件は留める

育成やマネージャー昇進率などは一見良さそうに見えて、採用後には採用チームがコントロールできない変数も数多くあります。そのため事業責任者や経営メンバーが設定する目標としては良いと思いますが、採用チーム視点だと難しいでしょう。

本当にそれは採用チームが関与したから達成されたのか?という問いに答えづらいと思います。

そのため、あくまで自身のチームの行動がどの成果にどれくらい結びつくのか影響範囲を定義しておき、そこに合わせた目標設定とアクションプランを設計するのが良いでしょう。