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【うらがみむらかみ往復書簡】11通目 | むらかみ

うらがみさんへ

レンジの中にいるような(すてきな表現!)獄暑(ごくしょと読みます)が和らいだと思ったら、西日本では大型台風の接近におびえる日々です。
おどろくほどに進みが遅くて、水曜に近畿に再接近と言われていたのが、日曜になるみたいで。各地の被害がまず気になりますし、息子の誕生日が近いので、祖父母を呼んでの誕生日会を延期しないといけないかどうかの判断にも悩んでいます。

葉月の由来、知りませんでした。
葉が緑色でたくましいからかな、なんて勝手に想像していたのですが、お月様だったんですね。
確かに、旧暦の季節で名付けられた和風月名(と呼ぶのですね、調べました)には、今の季節とのギャップがありそう。
時代小説はあまり読まないのですが、高田郁さんの小説は大好きで、読んでいるとイメージする月と季節感に違和感があって、戸惑うことがありました。
うるう月があるのも、今とは違うので興味深かったです。
そう、うらがみさんが書いてくださった風無月が、今は風強月になってしまって…ちょうどいい風がほしいです。

心地よい風を感じる場所、想像すると伸びやかな感じがしました。風を浴びて、手を広げているような。
うらがみさんが居心地のいい場所にいられる日がたくさんあるといいな、と思います。
「望む未来」「人生のテーマ」、あらためて考えてみると、私にとっては光が思い浮かびました。おひさまのぽかぽかした光。
春のあたたかな光が好きで、春が来ると冬眠から覚めた動物のように気持ちが活発になります。スキップしたくなる。
だから、どんどん春を感じる期間が短くなっているのはかなしいです。
きっと、自分がいきいきとしていられるか、がポイントで、やりたいことはたくさんあるし、興味があればすぐやってみる、自分にとって楽しいことをしている活動的な状態が好きなのかもしれません。
あと、本に囲まれていること、読書をすることは人生を通して欠かせないので、人生のテーマとしては「本」かもしれません。
うらがみさんに聞いてもらったことで、言語化できましたし、もうちょっと考えて、これだ、と自分の中で言い切れるようにしたくなりました。ありがとうございます!

自分を表現することへの恐れは、誰にも届かないことの怖さです。
自分が表現したくてしているし、誰に見られなくてもいい、そのいさぎよさは持てなくて。
むしろそうやって、自分を出し続けている人のほうが結果的に注目を浴びるのかもしれないけれど、誰にも何も思われないことの怖さの前に立ち止まってしまうことはあります。
かといって、自分が書いたことが誰かを不快にさせてしまっても、それはそれで苦しくて。
届かないことも、批判も、怖いんですよね。
それでも、目指したいものがあるので、今は焦らず続ける、を大切にしています。
うらがみさんはどうですか?

お手紙をもらってすぐに、うらがみさんのおすすめしてくださった2つの投稿を読みました。
すぐ感想を言いたくてうずうずしたのですが、きちんとお手紙に書きたくて、ぐっとこらえていました。今、やっと伝えられます。

[もうひとりの自分]には自身に重なるところがありました。
当時、母に話したことはありますが、それ以来、一度も誰かに話したことはない、子どもの頃に繰り返し見た夢。
和室の大きな開きの箪笥、天井まで届きそうなほど大きくて黒光りしていて、めったに開けないその箪笥が開いて、最初は子どもが数人出てきます。踊るように、軽やかに。先頭はいつも男の子でした。
視点はその光景を少し離れたところから見ている自分。
子どもたちの後から、妖怪なのか幽霊なのか今となっては記憶が薄れてしまったのですが、とにかく恐ろしい化け物がどろどろと出てきて、子どもたち、そして私を追いかけてくるんです。
走っても走っても追いかけてきて逃げきれず、あぁ、捕まる…!と背中に手をかけられて、そこで目が覚めます。
当時は(きっと今見ても)すごく怖かった。その夢を見て飛び起きたときはいつだって心が震え上がっていて、別の部屋に寝ている父や母、どちらかの布団へもぐりこんだものです。
私は誰?の感覚は、私にとっては、死んだらどうなるんだろう?死にたくない、でした。
天井を見上げて、その恐怖がぐるぐるうずまいて、しばらくの間はそれしか考えられなくなって。
うらがみさんの文章から、過去の自分を思い出し、自分以外にも近しくてでも自分とは違う体験や夢を見てきた人がいるのだ、とうらがみさんをより一層近くに感じました。

[岡山・香川旅行計画]はまず、読んでいてワクワクしました!
岡山も香川も、関西に住む人にとってはとても身近で車でも行けますし、近すぎて一度ならず何度か旅行で行ったことがあるから逆になかなか旅の計画をしないみたいなところがあります。
行き先が特に思いつかないから、とりあえず、香川でうどん食べる?みたいな…。
うらがみさんのおかげで、岡山も香川もめっちゃいいところやん、と再認識できました。感謝です。
うらがみさんにぜひ、香川のうどん食べてほしいなぁ。製麺所のてきぱき、はつらつとした雰囲気を感じながら、激安なのにとってもおいしいうどんをすすってほしい。

関東に住むうらがみさんにとっては、どこがそんな近しい場所になりますか?
うらがみさんが西日本に想いを馳せるように、私は東日本に憧れがあります。
東北も北関東あたりも訪れたことがなくて、東京、千葉、飛び越えて北海道しか行ったことがないので、いつか行きたい場所としてずっと気になり続けています。
行くのに気合いがいる都道府県というか。なかなか行けないからこそ、しっかり楽しみたいと意気込んで、でも気合いを出しそびれて行けずじまい…。もったいないですね。
東日本でおすすめの場所、もの、ことがあれば教えてほしいです!

想像の旅、まさしく、うらがみさんの妄想旅行を読んでいたとき、ちょうど私が読んでいた小説で行かない旅行の準備をし続ける兄弟のシーンがあって、妄想旅行とその場面がリンクして、うわぁ、となりました。
これは絶対にうらがみさんに伝えなきゃ!と、嬉しくなりました。
小川洋子さんの「ことり」という小説です。
人間の言葉を話さない兄。唯一、弟だけが兄の言語を理解し、二人は寄りそって生きていく。
二人の間にはいつも小鳥がいました。
この兄弟がそれはそれは用意周到に、旅行の準備をします。ひとつも忘れものがないように、念入りに。行き先はいつも違っているし、魅力的です。
でも、二人はどこにも行きません。
もしよかったら読んでみてほしいです。
こんなふうに人におすすめしたことって、今までになかったと思います。
このシーンがあなたに重なったから、なんて。
本棚に並んだ「ことり」を見るたびに、きっと、うらがみさんのことを思い出します。

うらがみさんの妄想旅行はいつかアレンジがあったとしても実現させてほしいです。瀬戸内の日差し、すこんと抜ける明るさを感じてほしい。
(冒頭の写真は和歌山県、白浜の海です)

横浜ではエディット横濱というホテルに泊まりました。
ブックホテルとまではいかないのですが、部屋に持ち帰って読める本が置いてあって心が弾みました。
選書してもらえるプランもあるのですが予約できず、それは残念。
バスソルトをオリジナルで作れるコーナーがあって、これもよかったです。バスソルトとハーブとアロマオイルを組み合わせるのが楽しかったし、湯船に浮かべるといい香りがして、この旅がよりよいものに感じられました。

東京は少し立ち寄る程度で、そんな中でも日本最大級の本屋さん、紀伊國屋書店新宿本店に行ってみたくて、時間を見つけて訪れました。
大都会、人、人、人だらけの新宿の中にこんなにも本がひしめいている。1階から8階まで全部、本!なんと幸福な建物だろうか、と。
ぽっかり口を開けながら、書店を上から下まで歩き回りました。
つくづく自分は本が好きなんだと感じました。

うらがみさんはこの夏、お友達との再会を楽しまれたのですね。
言える範囲でいいので、何か印象に残っているエピソードがあれば知りたいです。

積み重なった10通の手紙に、そっと1通を乗せて。

むらかみより

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