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音楽理論「重箱の隅」第22話「楽器の練習・メトロノームを使う意義と使わない意義」

こんにちは。ベーシストの村井俊夫です。

音楽理論の端っこのほうにある、ふとした事柄、でも割と大事なこと…重箱の隅を楊枝でつつくような記事を書き連ねています。

よろしくお願いいたします。

今日のお題は

「楽器の練習・メトロノームを使う意義と使わない意義」

です。


楽器の練習においてメトロノームはとても大事なツールです。そしてそれを使う際に「いま何を求めてメトロノームを使っているのか」を意識することも重要です。具体的には「パルス(PULSE)なのかフィール(FEEL)なのか」です。パルスは「テンポキープ」で、フィールは「ビート感」です。

例えば4/4拍子の練習をするとして、パルスを鍛えるメトロノームの使い方は次のように「拍頭に一致するタイミングに聴き取って弾く」方法です。

22話_パルス

4拍すべてを鳴らす方法に始まり、応用として何拍分かの空白を作っていきます。これらにより、軽音楽では絶対的に重要な「一定のテンポ」が鍛えられます。

それに対してフィールを鍛える聴きかたは次のように「拍内の細分化された内訳(ビートをつかさどる単位)のウラに聴き取って弾く」方法です。

22話_フィール

細分化のタイミングをつかむことによって、そのビート感の表現が鍛えられます。

このように、メトロノームは「テンポキープとグルーヴ」というふたつの大事な要素を鍛えるガイドツールなのですが、ここにひとつ、落とし穴があります。「メトロノームに頼りきってしまう」という現象です。

メトロノームの音色は無機質なクリック音ですが、メトロノーム練習が上手になるにつれ、メトロノームと合わせることが充分な「アンサンブル」感覚になっていきます。いわば、とても確実で頼りがいのある打楽器奏者との合奏のように思えてきます。メトロノームをパルスとして聴けば、とても堅実なドラマーのようで、はたまたフィールに聴けば、とても心地の良いパーカッション奏者のように聴こえてきます。

その境地は、メトロノーム練習としてはとても有益で、充分に効果が得られる、つまり「メトロノーム練習の上級者」ともいえるでしょう。問題はその次です。

では、いざ公演、という段になった時には…そこにはメトロノームはありません!

メトロノームとのアンサンブルに存分に慣れたあとにメトロノーム無しの実演に臨む、この時にとても心細くなり、演奏が安定しなくなってしまう、これが大きな落とし穴です。実演の時のドラマーはメトロノームほどには正確なパルスではないかもしれません。パーカッショニストはメトロノームほどにはジャストなウラを出してくれないかもしれません。

この落とし穴に落ちないためにメトロノーム練習の仕上げとして必要なのが「メトロノームを使わない練習」です。

メトロノームの助けを借りて培ったパルスやフィールをメトロノーム無しで披露する、この目的のために必要なのは「自分の中にメトロノームを持つ」ことです。拍頭にも細分化にも対応できるメトロノームを自分自身に持つことができたら、メトロノーム無しの心細さは薄らいでいきます。

メトロノーム無しの練習、それも自分ひとりだけの演奏練習をする時に、メトロノームを想像して(自分の中に作って)練習します。もしメトロノームがうまくイメージできなければ、ドラムやパーカッションを想像してみましょう。それらのイメージトレーニングをすることで、自分ひとりでもパルスやグルーヴを作ることができるようになります。作るべきものはすでにメトロノーム練習で作り置きしてあるわけですから。

今回のお題のまとめは…

①メトロノームを使う意義は、それをガイドとしてパルスやフィールを整え、その感覚を覚える。

②メトロノームを使わない意義は、①で覚えこんだ感覚を自分自身のメトロノームイメージで再現する。

ということです。常に両方の練習が必要です。

重箱だめだこりゃ

おあとがよろしいようで。

お読み頂き、ありがとうございます。

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