音楽理論「重箱の隅」第5話「グルーヴとは何ぞや」
こんにちは。ベーシストの村井俊夫です。
音楽理論の端っこのほうにある、ふとした事柄、でも割と大事なこと…重箱の隅を楊枝でつつくような記事を書き連ねています。
よろしくお願いいたします。
今日のお題は…
「グルーヴとは何ぞや」
グルーヴ(GROOVE)とは何でしょうか … 。
思いつく言葉を並べれば
「リズミカル」「盛り上がり」「勢い」「説得力」「愉快」…。
混沌としてきます。
たぶん、ジャンルや状況によって変化する言葉なのでしょう …「グルーヴ」。
今回は「良いリズム」という一点に絞って「グルーヴ」を考えてみます。
思うに、リズムに関するグルーヴのポイントは
① 「顕在的・潜在的にかかわらず安定した正確な拍子であること」
② 「その各拍を結ぶ手立ての質」
のふたつ、かと。
まずは拍子が正確でなければ乗るに乗れません。4拍子であれば、1拍目・2拍目・3拍目・4拍目が等間隔であること。
楽器のパターンによって、各拍を打っていればもちろんのこと(顕在的)、シンコペーションを使っていれば休符やタイの中にある拍(潜在的)が正確につかめていることが必須です。
そして「その各拍を結ぶ手立て」、つまり各拍に着地するアプローチノートの表現に、プレイヤーの個性が出ます。
この点に関しては、正解はひとつではない、とは思います。
例えば何かのパート(楽器)で、次のリズム演奏があるとします。
㋐㋒㋓は拍頭なので、これらは確実に正しいタイミングであるべきです。
㋑は2拍目に向けてのアプローチなので、「㋑は㋒に着地する」という意識を持ったうえで「さて、㋑をどんな風に演奏しようか」と。
特に16Beatではウラのタイミングは操作されます。テンポにもよりますが、㋑と㋒の関連性を強調するために、㋑のタイミングを少し後ろにずらすケースが多々あります。これがいわゆる「少し跳ねる」ということです。Evenの16BeatよりBounceの16Beatのほうが、より「グルーヴィー」に聞こえるのは、このためです。「少し跳ねる」と、アプローチノートがオモテに近づくので、拍子の明確さが増します。
その他にも「㋑と㋒はどちらのほうを大きな音にするか」なども考えます。ウラの鋭さを出すのか、拍の強さを出すのか、その音量差のグラデーションの具合は、などを。
㋔も4拍目の休符(潜在的な拍)に向かうアプローチノートなので、やはり同様の操作があり得ます。
パターンにせよフレーズにせよ、「拍を結ぶ手立て」がグルーヴの個性であるとすれば、そのリズム音型の区切り方をどう意識するか、が大きく影響します。例えば次のリズムがあるとします。
このリズムの区切り方は、「1・2」「3・4」拍で区切るのではなく(NG例)、アプローチ(8分ウラ)から拍頭へ着地するセット(OK例)で意識するべきです。実際に演奏する手足の動きも、それに沿ったものになることでしょう。
「打ち込み」と「生演奏」の大きな違いは、フィール単位のウラ、つまり8Beatなら8分ウラ、16Beatなら16分ウラ、の表現力の幅ではないでしょうか。それだけ生演奏はウラの表現に絶妙な加減をほどこしているものと。
「グルーヴ」という、あまりに広い海原の一端ではありますが、「音符、休符を問わず、正確な拍子」と「その連結の質」、このふたつは外せないポイントです。
そこでふと思う「メトロノーム」。いわゆる「グルーヴ感」とは対極な存在のように思われがちですが、少なくとも「正確な拍子」のポイントだけはクリアしているわけで … 意外とグルーヴィーかも、メトロノーム。
おあとがよろしいようで。
お読み頂き、ありがとうございます。
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