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エンパシーとミュージアム

エンパシーだなあ、と思った。

昨日、社会人大隈塾のメンバーと東京都美術館にいってきた。
話をしながら絵を観る、対話型鑑賞、ビジュアルシンキングストラテジーをしに。
(社会人の大隈塾は「リーダーシップ・チャレンジ」)
(学部大隈塾の卒業生もいっしょにいった)

①まずはひとりで、ささ〜っと展示全体を見渡す。(30分)
②グループになって、対話をしながらじっくり観る。(30分)
③またひとりになって、今度は気になっている作品をじっくり観る。(30分)
(Walls & Bridges)

②は、5分間の対話型鑑賞を3作品に対してやった。
作品を選んだり、そこまでの移動時間を考えて5分の対話にしたけど、
やっぱり3人グループで5分じゃ短かった。
8分でいいかもしれない。
(東京都美術館の稲庭彩和子さんのオススメは、15分2作品)

③は、ズビニェク・セカルの彫刻を、タイトルを見ずにじ〜っと観て、
タイトルを当てる、というお遊びをしてみた。
じ〜っと観て、「◯◯」と自分なりの題名を決め、
作品のそばに表示してある、作家自身がつけたタイトルに目をやる。

ハズレ、もあれば、惜しい!、もある。
惜しい! には、なかなか自分の審美眼も良いではないかと感動し、
ハズレ、には、あ〜そういうことかぁ、ひ〜〜、
と作家がこの作品に込めた思いを知る。

古代ギリシアの彫刻ならともかく、
いまの作家の彫刻はぱっと見て共感できるものではなく、
じ〜っと観てようやく印象が整い、それを言葉にしていって、
自分なりの題名をやっとこさつける、
そして、作家のタイトルと答え合わせ。
あるときは、

「無題」

と。おい! すんごい考えに考えたのに!
でも、それ以降、無題の作品には勝手にタイトルをつけてあげることにした。
「抱擁」だったり「過去へのトビラ」だったり。
(模写をすると、「すみずみまでよく観る」につながっていく。オススメ)
(ただし、美術館はペン描き禁止。えんぴつを貸してくれる)

②は、メンバーたちが思いもよらないことをいう。
カバー写真の作品は、わたしは「脳みその中の記憶」と感じた。
複雑なジャングルジムのようなひとつひとつのハコのなかに、
ひとつずつ記憶が入っている。思い出がつまっている。

メンバーのアカリは、小枝が積み重なっていて、
バキバキとつぶれていく音がする、といっていた。
この中を走り回りたい、とも。

メンバーのサムライは、この奥、物体の中心には、
人から見られたくないものが入っている、と。

自分の経験や感情を作品に重ねて、その作品を解釈する。

ブレイディみかこの新刊本『他者の靴を履く』では、
エンパシーとシンパシーの違いについて書いてあった。

シンパシー(sympathy)
1. 誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を理解して気にかけていることを示すこと
2. ある考え、理念、組織などへの支持や同意を示す行為
3. 同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解
エンパシー(empathy)
他者の感情や経験などを理解する能力

美術作品の鑑賞そのものが、作家の感情や経験を理解しようとすることだし、
その能力を高めるトレーンングになる。
さらにそれを対話をしながら鑑賞することで、
エンパシーという他者の内面を理解する能力をさらに向上させていくことになる。

グローバルだったり、多様性だったりは、
エンパシー(理解する能力)が大事。

美術館博物館にいくこと、そして対話型鑑賞をすることは、
学生たち、ビジネスパーソンたちが学び合うには、
とても意味のあることだと、再発見した。

      (『他者の靴を履く』ブレイディみかこ 文藝春秋 2021年)