「呪いの言葉」と「祝いの言葉」
百花繚乱に咲き乱れる「ダメ出し」言葉
世の中ダメ出しの言葉に満ちあふれている。
たとえばTwitterではおびただしい数のダメ出し言葉が飛び交っている。
政治家に対して、企業に対して、Twitter上での発言者に対して。
読むと「たしかに」と思うけれども、
「いや待てよ」と、と同感したり共感するのをためらうようになった。
『ホメ出しの技術』の著者澤田智洋さんは、
否定する、叱責する「ダメ出し」に対して、
肯定する、ホメることを「ホメ出し」としている。
さらに、
ダメ出しの言葉を「呪いの言葉」、
ホメるの言葉を「祝いの言葉」と表現する。
呪い、と、祝い。
さすがにコピーライターだなあと感心する。
SNSでのダメ出しだったりツッコミに対して、
共感しながら「いや待てよ」と同調しないようにしはじめたのは、
『ホメ出しの技術』を読んで、
ダメ出しの言葉は「呪いの言葉」であり、
呪いであればそれに共鳴するのはためらわざるを得ない、
と思うようになったから。
資産を与えるか負債を与えるか
澤田さんは、ホメることは相手に資産を与えること、
ダメ出しすることは相手に負債を負わせること、とも書いている。
たしかに、ホメられれば気分が上がるし、
ホメられたことを続けることによって実際の資産を得ることもある。
たとえば作家の遠藤周作は、母親から「お前には一つだけいいところがある。それは文章を書いたり、話をすることが上手だから、小説家になったらいい」といわれて、
本当に作家になった。(『ホメ出しの技術』p24)
また、澤田さんは、
とも書いている。
インパクトが大きいから数が多いように感じられるのか、
それとも実際にダメ出し言葉の方がホメ出し言葉より数が多いのか。
わたしたちは大学受験を通して、
「ミスを見つける力」を養ってきたので、
揚げ足を取ったりするダメ出し言葉を容易に吐き出すことができる。
かくしてわたしたちは呪いの言葉を世の中に充満させているが、
少なくともわたしは、呪いの言葉をリツイートするよりも、
事あるごとに祝いの言葉をかけて上げて、
その人の資産を増やしてあげたい、
と思うようになった。
『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術』澤田智洋 宣伝会議 2022年