ダメ出し文化は大学入試にルーツがある
こういうミスを見つけると写真に撮ってSNSに上げたくなる。
(サバじゃねーだろ(笑)ってコメント付きで)
ついつい欠点を見つけてしまう、弱点を見つけてしまう。
ダメ出しはできるんだけど、ホメるのは苦手。
というのは大学入試が影響している、という仮説がある。
『視点という教養 世界の見方が変わる7つの対話』の中で、
東京大学教授・慶應義塾大学教授の鈴木寛さんがしゃべっている。
1979年、国立大学の入学試験に共通一次試験が導入された。
マークシートの試験で、選択肢の中で正解をひとつだけ選ぶ方法。
のちに公立大学も共通一次に組み込まれ、
1990年には私立大学も含める大学入試センター試験に再編された。
これで年間およそ55万人の高校生、浪人生が、
マス目を塗りつぶして何点取るかに血眼になるようになった。
選択肢をひとつだけ選ぶということは、
与えられた選択肢を消去法で減らしていくということで、
生徒たちは小さなミスを見つける力を徹底的に訓練される。
とくに現代文では、選択肢のどこにミスがあるかを見つける作業になった。
つまり、高校生たちは「ミスを見つける力」を養っていたことになる。
他方、世の中1970年代は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代。
日本の製品が世界で最も不良品を出さないことで評価され、
世界一のものづくり大国になった。
つまり、ミスをしないこと、ミスを見つけて直すことが評価され、
ときを同じくして共通一次試験が導入されたことによって、
「ミスをしない」価値観が強化されてしまった。
(『視点という教養 世界の見方が変わる7つの対話』 p238-239)
なるほど。
それで、欠点や弱点を見つけるのは上手、
ダメ出しはできるけどホメることをしない文化になり、
新しいことにチャレンジしにくい空気がつくられ、
前例がないことが最強のブレーキになった、ということか。
前例主義、ダメ出しは大学入試にルーツをもつ。
人のミスを見つけて写真を撮ってしまう文化もそうか。
たしかにわたしは共通一次試験世代だ。
『視点という教養 世界の見方が変わる7つの対話』 深井龍之介、野村高文 イースト・プレス 2022年