フォッサマグナに信州妖怪伝説を辿る! 『信濃奇勝録』から山と海の出会いを読む/妖怪探偵団
信州の不思議な伝承をまとめた『信濃奇勝録(しなのきしょうろく)』には、
鬼女、河童、猿手狸や石羊など、妖しい生物がたくさん登場する。なぜ、このような奇書が生まれたのか。信州という土地に何か関係があるのか。
フォッサマグナが描かれた『妖怪大戦争』ガーディアンズの公開を機に検証する。
文=森一空
写真=キッチンミノル
信濃奇勝録現代語訳=福原圭一
プロローグ 映画に触発され、探偵団、信州へ
2021年8月13日、『妖怪大戦争』ガーディアンズが全国にて公開される。
映画では、日本列島の大山脈地帯から湧き出てきた化石群。太古の海の生物たち、縄文のビーナス、フォッサマグナ、戸隠山など、明言はされていないが、信州の雄大な自然を思い起こさせる情景描写が多い。
「妖怪大戦争展2021ヤミットに集結せよ!」開催中
映画で重要な役割をもつ「妖怪獣」という物の怪が登場するが、こいつがフォッサマグナに眠る膨大な海の生物の化石が集合してできた怪物として描かれているのだ。日本の妖怪たちは、いかにして妖怪獣と戦うのか、それは見てのお楽しみだが、妖怪探偵団は、海の生物の化石が集合してできた物の怪とはなにか、という点に注目してみた。
そこで参考にしたのが江戸時代に書かれた『信濃奇勝録』だ。
そこには、妖怪獣の出現を暗示していたような記述も残されている。
『信濃奇勝録』とは、その名の通り、古来の信州の謎と不思議についてまとめられた書物であり、さまざまな妖怪、奇妙な現象が描かれている。同書は、信州・南佐久郡臼田の神官で地元の史家であった、井出道貞が記した本だ。信濃各地を十数年にわたって実地踏査し、見聞を記録したもので、江戸時代を代表する地誌のひとつである。
われらが妖怪探偵団の古生物学者、荻野慎諧もこの本を著書で触れているので聞いてみると、「嘘や誤報も多いだろうけど、まさかの真実があるかもしれない。淡々とその地域で目撃された不思議な動物が記載されているだけに興味深い本です」確かに、読み進めていくと冷静に事実を述べ、解釈を入れずにそのまま記していて、実際にそれが起き、不思議に出会ったのだろうと思わせてくれる。さて実際には、何が起こっていたのだろうか。
海の民と山の民 信州は昔、海の底だった
『信濃奇勝録』に、長野は昔、海の中だったことを確信させる記述がある。戸隠の「貝石(かいせき)」だ。
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