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<入選発表>オカルト短歌・お題「恋」/笹公人・水野しず

歌人・笹公人氏の新刊『念力恋愛』(幻冬舎)の発売を記念しての「オカルト短歌」企画。お題「恋」にて、多数の投稿をいただきました!
注目の「水野しず賞」を含め、優秀作の発表です!

文・選評=笹公人 協力=水野しず

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イメージ写真=ぱくたそ

<最優秀作品>

大吉が凶になるけど構わない君の名字を名乗ってみたい
【中田美喜】

名前の字画数による姓名判断です。
現在の法制度では結婚するとどちからの苗字が変わるのです、そうすると全体の画数が変わるので、姓名判断を信じる人にとっては一大事です。
とくに、今のところ苗字を変えるのは女性が多いので、女性ならではの発想の歌ですね。
とはいえ、字画が凶に変わるくらいで結婚をやめる人もいないでしょう(いるかもしれませんが)。
愛は字画を越えるのです……!(BGM「サライ」)

☆賞品☆
サイン入り『念力恋愛』短歌と文・笹 公人 絵・水野しず(幻冬舎)

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<優秀作品>

ときめかぬものは捨てるとこんまりの教え通りに捨てられる恋
【夜森だゐすけ】

こんまりさんの本を読むと、無性に断捨離したくなりますよね。
僕もあの本を夏に読んで、衝動的に冬服をたくさん捨ててしまい、冬になって困ったことがありました。
アホですね……。まぁ断捨離もほどほどにしたいものです。
まして人間関係は、いつ状況が変わるかわかりませんから、よほどの悪縁は別にして、簡単に物のように捨てたら、いつかしっぺ返しをくらいそうです。
特に結婚は、ときめかなくなってからが本当のスタートじゃないでしょうか。
えーと、何の話でしたっけ……。


だらしなきあの娘の部屋の缶珈琲 ストーンヘンジが成り立っている
【つきかも】

そういえば、中学校の頃の友人が、部屋の隅にバドワイザーの空き缶を積み重ねていました。
いかにも80’sな哀愁あふれる光景です。
空き缶が偶然、ストーンヘンジの配置になっていたところがおもしろかったです。


好きだったあの子が読んでたあの本の言語がいまだに見つけられない
【我妻青依】

あの子はきっと異星人だったのでしょうね。
カタカムナっぽい文字をイメージしました。


<佳作>

身を投げし乙女の里に巡り来て近づかないでの声を聴く
【8角介】

せつない系のオカルト短歌です。
放っておいてほしいのに、観光スポットにされたばかりに迷惑しているのでしょう。
霊の世界でもモラハラは存在するのです。


はだけた布団直される聖夜のポルターガイスト何か優しい
【アルベルト志村】

聖夜だけは例外なんでしょうかね。
神聖なパワーが強くて、ポルターガイストもこの日ばかりは悪さができないのでしょう。
「恐怖新聞」もこの日だけは窓を突き破らないかもしれません。


マドンナが返した本のぬくもりを両手に記憶してる図書委員
【たいげん】

田山花袋の『蒲団』的なあれにも見えますが、好意的に見れば、彼女の残留思念を読みとっているようにも見えますね。


「なぜダンスはじめたの?」とか聞かないで天中殺を気にしてしまう 
【丸山朱梨】

新しいことをしてはいけないと言われる「天中殺」。
作者は、天中殺の年にダンスを始めたのでしょう。
とはいえ、よく調べてみると、天中殺(四柱推命でいう空亡)とか
大殺界の年に始めたことが大成功してる人もたくさんいるので、気にしすぎないのが一番です。
ふだんの心がけが良い人は、そんなにひどい目には遭わないと思います。

丸山朱梨さんは、春陽堂書店のWEBで「家族のかたち」木滝りま(小説)×丸山朱梨(短歌)という連載をしています。
ぜひご覧ください!


金髪の金星人に恋い焦がれ 天文学者はいまじゃ白髪
【ふじたま】

前回「最優秀作品」に選ばれた、SF作家・藤田雅矢さんの作品です。
火星人の恋人に相聞歌を送り続けたUFO研究家・清家新一さんを思い出しました。
UFOコンタクティによると、金星には美男美女しかいないそうです。
そんな中での恋愛関係はどうなってるんでしょうかね。
金星から来たというオムネク・オネクの本は、おもしろいのでオススメです!


「運命の人は現在ご自宅のベッドの下にいる」と言うユタ
【星野珠青】

江戸川乱歩の「人間椅子」っぽい変態がベッドの下で生活している!?
トイレをどうしてるのか気になりますね。
部屋を視るというところで、「オーラの泉」の江原さんを思い出しました。


<水野しず賞>

さて、お待ちかね!!
今回特別に設けました、水野しずさん選歌の「水野しず賞」の発表にまいります!!

☆水野しず賞☆
戯れに好きと言ったら真剣に検討された末にフラれる
【中田美喜】

<水野しずさんの選考コメント>
私も戯れな発言に真剣な検討をしてしまうことがよくあるのですが、
確かにこれってオカルトだなと。
オカルトの新機軸解釈が面白かったので選ばせて頂きました。

☆賞品☆入賞作品オマージュイラスト原画

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中田美喜さん、まさかの二冠です! おめでとうございます!!
まさか同じ人が選ばれるとは思わなかったので、もうひとつの賞品を急遽、用意しました。

また何かの機会に開催できる日を楽しみにしております!!
それまでにぜひ『念力恋愛』(幻冬舎)を読み返して、
「オカルト短歌」の腕を磨いておいてください!

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『念力恋愛』(幻冬舎) 笹公人 / 著 水野しず / 絵
「あの夏の石段の上僕の背を押した少女よ どうしてますか」「ラブレターは死語か否かで華やいだ吉祥寺デニーズ跡地ながめる」「修学旅行で眼鏡をはずした中村は美少女でした。それで、それだけ」
ひっそり恋しく思い輝く108の星団 怪しくも艶やかに微笑む40の恒星。短歌界の異才・笹公人×アート界の鬼才・水野しずによる、短歌と創作(妄想ラブレター)とイラストの、「念力恋愛」ワールド。

笹 公人(ささ・きみひと)
歌人。1975年東京都生まれ。「未来」選者。現代歌人協会理事。
「牧水・短歌甲子園」審査員。大正大学客員准教授。
歌集に、NHK Eテレにて連続ドラマ化された『念力家族』(朝日文庫)、『念力図鑑』(幻冬舎)、『抒情の奇妙な冒険』(早川書房)、『念力ろまん』(書肆侃侃房)。
エッセイ集『ハナモゲラ和歌の誘惑』(小学館)、バラエティ作品集『念力姫』(ベストセラーズ)、『念力レストラン』(春陽堂書店)、朱川湊人との共著『遊星ハグルマ装置』(日本経済新聞出版社)、和田誠との共著『連句遊戯』(白水社)、和田誠・俵万智・矢吹申彦との共著『連句日和』(自由国民社)、絵本『ヘンなあさ』(絵・本秀康/岩崎書店)、編著『王仁三郎歌集』出口王仁三郎(太陽出版)など刊行書籍多数。

水野しず(みずの・しず)
イラストレーター/コンセプトクリエイター。1988年生まれ、岐阜県出身。実家は日本酒「三千盛」の酒蔵。武蔵野美術大学造形学部映像学科中退。
在学中は主にイラスト、アニメーションを制作。
講談社主催のオーディション「ミスiD 2015」でグランプリ受賞。
以降、イラスト・執筆以外に、映像やイベント出演などにも活動の幅を広げる。


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