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霊界物語から宇宙論、消えた財宝など……/ムー民のためのブックガイド

「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

文=星野太朗

「異種交配生物の未来 恐竜と巨人(ネフィリム)は堕天使のハイブリッド!」 泉パウロ 著

聖書解釈のひとつの可能性を提示する書

「本書はノンフィクションであり、真面目な実話であり、私たちの運命に直接関わる大問題です」。
 本書を一読すればわかるが、著者の立場は当然ながら、聖書の記述を事実として受け入れる福音主義に則っている。ゆえに一般的な日本人の常識とは齟齬を来す部分もあるというわけだ。このことを念頭に読めば、きわめて興味深い内容の本だとわかる。いったん頭のなかの常識を棄て去ってから取り組もう。
 まず、「有名なアッシャー司教の試算」にもとづいて、本書では天地創造が紀元前4004年。ノアの洪水は紀元前2348年に実際に起った史実であるというのが前提だ。だからたとえば、「ナスカ平原は……超乾燥状態が1万年以上にわたって続いてきた」という学説に対しては、「1万年以上は計算間違いで長すぎ」ということになる。
 著者は旧約聖書とその外典、さらにはクムラン洞窟から出土した死海文書の『巨人の書』までをも丹念に読み解き、そこに記された驚愕の古代史を提示する。それによれば、ノアの洪水の前、天から地上に降りた「堕天使」が人間の娘と交配して生まれた種族が人喰いの巨人であり、またさまざまな獣と交配して生まれたのが恐竜であったという。
 だが現在もなお、堕天使のなれの果てである悪霊が、いぜんとしてこの地上を徘徊し、人々を悪の道に誘っている。したがって現代を生きるわれわれは、「これら悪霊どもを追い出す力ある勇士」となって、迫りくる「ノアの大洪水の再来」を阻止せねばならないのだ。聖書解釈のひとつの可能性を提示する書といえよう。


「宇宙は無限か有限か」松原隆彦 著

最先端の研究成果にもとづく宇宙論の最新知識を紹介

 はたしてこの宇宙は無限なのか有限なのか? 結論からいうと「わからない」というのが現状だ。だが、ただわからないというのではなく、何がどうわからないのか、それを考えることこそ「宇宙の神秘へ近づいていく過程そのもの」であると著者は説く。
 本書の最大の特徴として、ともかく記述が明快で解りやすいということが挙げられよう。たとえば有名な相対性理論の「光速度一定の原理」について、これまで何度説明されてもピンと来なかったという人でも、本書の説明ならばすとんと腑に落ちるのではないか。著者は高エネルギー加速器研究機構素粒子核研究所教授で、すなわち宇宙に関するエキスパート。そんな人が、最先端の研究成果にもとづく宇宙論の最新知識を文系の素人にも解りやすく解き明かしてくれるのだから堪らない。もはや古典的ともいえる相対性理論や量子力学から、あまり馴染みのない「バリオン音響振動」、さらには最近流行りの多世界解釈やシミュレーション仮説まで、ひと通りの知識を楽しく身につけることができる。
 そして何より、本書を読んでいてまざまざと実感させられるのが、「無限」というもののそら恐ろしさだ。何しろ「無限の前には、1グーゴルプレックスの100京乗であってもゼロに等しいほど小さい」のである!
 この言葉の意味するところの恐ろしさがわからない人は、今すぐ本書を買って熟読すべし。


「あらすじで読む霊界物語」飯塚弘明、窪田高明、久米晶文、黒川柚月 著

全巻読破はほぼ不可能といわれる内容を読みやすく

『霊界物語』といえば、本誌の読者には改めて紹介の必要はないかもしれないが、近代日本最大の霊的巨人・出口王仁三郎が口述筆記した経典にして物語である。何と全81巻に及ぶ大長編であり、「126種類の読み方がある」とされる内容のほうもさることながら、その純然たる分量だけでも空前絶後の大作である。
 かつて八幡書店から出版されていた愛蔵版を評者も所有していたが、何しろ膨大であるから、それだけで書架の一角が占拠されてしまい、その扱いには難渋したものであった。その後、ソニーの電子ブック版も登場、そのあまりの簡便さに感動したが、現在ではこの「電子ブック」という規格自体が消滅しているのだから、隔世の感がある。それが現在では、同書のすべての内容がインターネット上で無料公開されているというのだからよい時代になったものだ。
 本書の著者のひとりである飯塚弘明氏は、数年がかりでみずからそのインターネット版を作製した、おそらく日本で一番『霊界物語』を知る人物。そんな斯界の第一人者が、膨大な『霊界物語』をコンパクトな(でもないが)あらすじに読みやすくまとめたのが本書である。全巻読破はほぼ不可能といわれる『霊界物語』、その内容をここまで簡便に(でもないが)読めるのだからまさに万金に値する。また、『霊界物語』の成立や意義を懇切丁寧に説く解説や興味深いコラムなども収録されていてサービス満点。一家に一冊の必携書。


「ロマノフの消えた金塊」上杉一紀 著

権謀術数渦巻く消えた金塊の運命を追う壮大な物語

 標題の「ロマノフ」とは、1613年から1917年まで、300年の長きにわたってロシアを支配したロシアの歴史上最後の王朝である。ピョートル大帝や女帝エカチェリーナ、さらにはかのナポレオンの好敵手として知られるアレクサンドル1世など、錚々たる名君主を輩出したこの王朝も、1917年のロシア革命とともに終焉を迎えた。
 だがこの革命と内戦の最中に、500トンという途方もない量の金塊が、シベリア鉄道を東へと漂流しはじめたのだという。
 権謀術数渦巻くこの金塊の運命を追う物語を主軸に、日本の「宣戦布告なき戦争」(しかも負け戦)であるシベリア出兵の実相、そして当時のユーラシア大陸を舞台としてそれぞれの事情と使命と野心とを抱えて暗躍した人々の人間模様を活写する壮大な物語が展開する。
 著者・上杉一紀氏は、西側テレビ記者として旧ソ連の閉鎖都市ウラジオストクを初取材したジャーナリストで、主としてニュースやドキュメンタリーの制作に当たってきた。そんなロシア通の著者が徹底した「証拠主義」の姿勢を貫いて究明した本書は、事実だけが持つ重みがひしひしと伝わる傑作。当時の日本人が現代人などおよびもつかないほどの国際感覚を持って海外に雄飛していたことを実感させられる部分もある。前項の『霊界物語』の主人公である出口王仁三郎もちらりと顔を出すのは何かの巡り合わせか。


「緊急提案! 現代版『ノアの方舟』を建造せよ!」河村龍一 著

昨今の気象の激甚化にあっと驚く解決策を提示する

「地球温暖化」という言葉が叫ばれるようになって久しい。昨今の気象の激甚化はだれもが身を以て実感しているところであり、2016年の大統領選当時、ヒラリー・クリントン候補者のブレーンが彼女に宛てたメールにも、「20年以内に人類が滅亡する」と明記されていたという。
 本書は、年々破局化の一途を辿る気象災害や震災、原発事故などの背景を探り、あっと驚く解決策を提示する救世の書。
 著者は元刑務官で、全盛期にはベンチプレス120キロを挙げたという古強者。一方で小学生のときにUFOを目撃して以来、一貫して地球外生命体に興味を抱き、また東日本大震災の被災地復興支援作品執筆のために石巻市で4年にわたってタクシードライバーとして潜入取材を敢行するなど、余人を寄せつけぬ好奇心と行動力の人でもある。
 そのような著者の真摯な人柄が遺憾なく発揮された文体で、誠心誠意、地球の危機を説き明かしていく本書の言葉は、だれもが襟を正して謹聴せずにはいられないだろう。
 それらの危機を乗り越える方法として、著者の提唱する「現代版ノアの箱舟」は今すぐにでも着手すべき現実的な方策であるし、また「宇宙エレベーター」も今後30年で実現される見通しだ。しかしこれらを含めて、著者が人類の未来に希望を抱いている真の理由、それを知ることこそ、本書の読者に対する著者からの最大のプレゼントであろう。


「かみさまは中学1年生」すみれ 著

第1作では「伝えきれなかった言葉」を綴った実話集

 著者のすみれ氏は2007年生まれの中学1年生。「ママのおなかに入る前のことをすべて憶えており、おなかの中のあかちゃんとお話しすることもできる」という不思議な少女だ。彼女が話のできる相手はそれ以外に「人間、かみさま、天使、妖精、宇宙人、薄い人(幽霊)、石や物など」と多岐にわたる。評者は寡聞にして未見ではあるが、2年前に上梓された初の著書『かみさまは小学5年生』は40万部を超える大ベストセラーとなったというから驚く。
 本書は、第1作から2年間の成長を経た著者が「あのときのすみれちゃんでは伝えきれなかった言葉」を綴った不思議な実話集である。
 何しろ「人が生まれる前の世界」の記憶が今も残っているという著者だけに、驚異的な話が目白押しであるが、本書の主要なテーマは「あかちゃんからママへのメッセージ」にあるとお見受けする。著者自身、「生まれる前から愛していた」現在のママを選んでこの世に生まれてきたし、またママの胎内にいる間に外の景色を見たり、ママのことを観察したりしており、今現在も「いろんなあかちゃんと話ができ」、彼らのメッセージを伝えているというのだ。
 このような著作に対して、科学的あるいは常識的見地からあれこれ意見するのはそれこそ野暮というもの。並外れた感覚を持つ純粋無垢な少女の言葉として素直に味わい、癒されておくのが最上だ。特に、子を持つ親の皆さまにはぜひお奨めしたい。


「PenBOOKS 水木しげる大研究。」ペン編集部 編

水木しげるの魅力を多角的な観点から探る

 日本が世界に誇る漫画界の巨星・水木しげる。たんなる漫画家の枠を越え、現代日本人の「妖怪」のイメージを規定した、人類史上屈指の偉人のひとりである。荒俣宏、京極夏彦、多田克己ら錚々たる面々を「直弟子」として従える大物ぶりは、もはや人間というより妖怪の域に足を踏み入れているといえよう。60年前の作品である代表作『ゲゲゲの鬼太郎』が現在もなお新作アニメとして制作・放映されているという事例は、世界的にも類を見ないのではないか。
 本書は、そんな水木しげるの魅力をインタビューや評論、現地ルポなど、多角的な観点から探り、豊富なカラー図版とともにお届けする、まさに水木ファン垂涎の一冊である。巻頭と巻末には往年の「ガロ」に掲載された水木自身の漫画と、74歳のときにひとりで描いた絵本作品(しかも後者はフルカラー!)も収録されていて、これだけでも買い求める価値は十分にある。 
 本書の唯一の欠点は、美しい図版の数々を眺め、知られざる水木の生涯に触れているうちに、ついつい本書にも登場する京極夏彦氏が愛情込めて編集の労を執った「水木しげる大全集」に手を出したくなってしまうことだろう。とはいえあちらは全100巻以上、価格にして20万円を大きく超えてしまうから、清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要となる。
 水木しげるファンでありながら、本書だけで我慢できるという稀有な人には手放しでお奨めできる一冊。


(ムー2020年3月号掲載)

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