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タブー怪談「鮫島事件」と「田中河内介の最期」の謎/吉田悠軌・オカルト探偵

ネット民のたわいない悪ふざけから発生した「鮫島事件」は、発信者の手を離れ独り歩きをはじめる。その先に浮かび上がったのは、語ってはならない禁忌として恐れられたあの怪談との奇妙な共通点だった――。

文=吉田悠軌 #オカルト探偵

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吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。写真は映画『真・鮫島事件』永江二朗監督とツーショット!
永江監督との対談記事はこちら

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語ってはならない話「田中河内介の最期」

 2ちゃんねる黎明期の暗部が隠されているという「鮫島事件」。その真相については、2ちゃんねらーが「①無人島『鮫島』で謎の失踪と死をとげた説」「②『鮫島』という男をリンチ殺人にかけた説」のふたつがよく語られる。
 もっともそうした噂のすべてが、悪ふざけの創作にすぎない。インターネット普及が進んだ2000年代初頭、匿名掲示板の古参組(「あやしいわーるど」「あめぞう」などの経験者)が、新参組(2ちゃんからの新規参入者)をからかうために創ったジョークネタ。鮫島事件とは、ありもしない事件をあるかのように楽しみ、「語ってはいけないタブー話」の周辺だけを語るフェイク・ゲームなのだ。
 ……という解説を行ったのが前回のこと。しかしそんな「合理的説明」で終わらせてしまっては、オカルト探偵の名がすたる。ジョークやゲームのつもりで参加した投稿者=創作者本人たちですら自覚していない、鮫島事件の「オカルト的真相」を、私が暴きだしてみせよう。

 それはずばり「田中河内介(たなかかわちのすけ)の最期」である。
「鮫島事件」「牛の首」と同じ「語ってはいけないタブー話」についての怪談だが、こちらは完全なるフェイクではなく、しっかりしたファクトが基礎となっている。田中河内介の惨殺はもちろん史実だし、その最期を語ろうとした男が死んでしまったことも事実として確認されているのだ。
 その事件状況を、錯綜する複数の証言から再構成したのが、以下の文章となる。

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