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探査機ジュノーが撮影した巨大惑星「木星」の驚異/権藤正勝

太陽系最大の惑星である木星。最近、イラストと見まごうばかりの詳細かつ
極彩色の木星表面の写真を目にした読者も多いだろう。新しく公開される木星の写真の多くは、NASAの最新の木星探査機ジュノーが撮影したものである。今回は、探査機ジュノーのとらえた美しい画像とともに、知られざる木星の姿を見ていこう

文=権藤正勝 写真=NASA

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渦状の雲の塊。地球よりも大きな嵐が吹き荒れている。

地球の318倍の質量の巨大なガス惑星

 木星は、太陽系の8個の惑星のうち、太陽から5番目に離れた公転軌道を持つ惑星で、地球からは、火星、小惑星帯を挟み、その外側に存在する。岩石の地表を持たないガス惑星で、木星の外側を回る土星とともに木星型惑星と呼ばれる。
 木星自体を探査目標とした惑星探査機は意外に少なく、1995年に木星の軌道に到達したガリレオ探査機と、現在活動中のジュノー探査機の2機のみである。だが、外惑星の探査では、木星の巨大な重力を利用して加速するフライバイが行われるため、火星以遠の惑星としては、探査機が接近した数が最多となっている。
 木星を初めて間近から観測したパイオニア10号も、木星をかすめフライバ
イを行い加速し、太陽系を脱出できる軌道へ投入されている。その他、外惑星探査機ボイジャー、太陽探査機ユリシーズ、土星探査機カッシーニ、太陽系外縁天体探査機ニューホライズンズなど、驚くほど多くの探査機が、木星でフライバイを行っている。

 このような背景から、木星は、多くの探査機により多角的に探査され、想像もできなかったような事実が多く判明している。巨大なガスの惑星という、地球とはまったく異なる世界ながら、地球と共通する大気現象も数多く見つかっている。
 木星は、太陽系最大の惑星であるが、それでも太陽を直径1メートルの大きさだと仮定すると、太陽から560メートル離れたところを回る直径10センチの大きさでしかない。太陽と比べるとちっぽけな木星だが、その質量は地球の318倍で、太陽系全体の質量の71パーセントを木星が占めている。
 木星自体の大きさもさることながら、その衛星の大きさも惑星並みで、さながらひとつのミニ太陽系といったところである。実際、木星が半径でもう30パーセントほど大きければ、赤色矮星として輝きはじめたという試算もある。
 そして木星は、太陽系の防御シールドとしても機能している。その巨大な重力により、太陽系外縁部から飛来する小天体の多くを木星が引き寄せ、飲み込んでいる。1994年には、シューメーカー・レヴィ第9彗星が、20個以上もの破片に分裂し、木星に激突する様子が観測されている。

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高度4200キロの地点から撮影された乱気流。絵の具を塗りたくったように見える。

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北半球の雲の渦。

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北極の嵐。中央に高気圧が、その周辺に8つの低気圧がある。

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赤外線がとらえた南極のサイクロン。極を中心とするサイクロンを直径5600〜7000キロの5つのサイクロンが取り囲んでいる。

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北半球の雲の様子。目のような渦巻きやジェット気流によって複雑にうねる雲がとらえられている。

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