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史上最強生物「クマムシ」の謎 不死身の生命体は宇宙で進化した!!/権藤正勝

地球の生命の起源は宇宙にあるとする仮説がある。
近年、この仮説を裏づけるような生物の驚くべき能力が解明されている。
微小生物クマムシもそうした生物のひとつだ。その驚異的な能力は、まるで宇宙環境に適応するために備わったかのようだ。

文=権藤正勝

放射線にも耐える最強の生物

 地球上最強の生物は何か? こう問われたならあなたは何と答えるだろうか。ライオン? トラ? ゾウ? ホオジロザメ? いやいや絶滅したとはいえ恐竜が最強だ‼ と答えるかもしれない。だが、筆者なら迷わずクマムシと答える。

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超高温、超低温、乾燥とどんな環境でも生存できるクマムシ(写真=Science Photo Library/アフロ)。

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写真=Wikipedia

 クマムシとは、緩歩(かんぽ)動物という聞きなれない分類に属する動物の総称で、体長は最大で1.7ミリとされるが、ほとんどは1ミリ以下の目に見えないサイズである。全体の形がクマに似ていることからクマムシと呼ばれている。
 虫という名前がついているが、昆虫の仲間ではない。分類上、動物界の下の門のレベルで独立した生物群である。古生代のカンブリア紀には、すでに存在していたとされるので、生物が爆発的に進化したカンブリア大爆発で誕生した生物だろう。
 では、この微小な生物が、なぜ最強生物なのか見てみよう。まず、クマムシはどこに生息していると思うだろうか? 正解は「どこにでもいる」である。極寒の両極から赤道地帯まで、地球上のあらゆる場所に生息している。その生活環境も、深海の底からヒマラヤのような高山地帯、温泉の中にさえ生息している。
 これほど多様な生活環境で生息できる生物は、バクテリアぐらいしか思い浮かばないだろう。だが、クマムシは、小さいとはいえ体節構造を持ち、神経系や消化器系も備えた複雑な多細胞生物である。単細胞の原核生物であるバクテリアとは、まったく異なる生物なのだ。

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