白蛇酒/読者のミステリー体験
「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。
選=吉田悠軌
白蛇酒
兵庫県 54歳 岡崎春男
数年前に知人の身に起きた出来事です。
彼の家は岡山県の地方都市の郊外にあり、代々、行商人などが利用する木賃宿を経営してきました。
聞くところによると、その家には大きな白い蛇がすみついていて、その白蛇が彼の家を守ってくれるということです。この話は代々伝えられているそうです。
そのせいかどうか、あることから彼は異様に蛇に執着するようになり、休みになるたび裏山に行き、蛇をつかまえては生きたまま焼酎入りのビンに漬け、押し入れに並べるようになりました。暇さえあれば押し入れを開けてビン漬けされた蛇たちを眺める。そんな行為を彼は趣味としていたのでした。
ある日のことです。なんと彼はついに自分の家の代々の守り神とされていた白蛇を捕まえ、焼酎漬けにしてしまったのです。
そのような行為に及んだ彼にさまざまな災難が降りかかるようになるまで、それほど時間はかかりませんでした。
数日後の夜、酒に酔った彼は自宅2階から足を踏みはずして転落。背骨を骨折してしまうという事態に。救急車で病院に運ばれて、緊急入院することになりました。
やがて骨折が完治し、退院する運びに。
しかし退院した直後から、もともと折りあいが悪かった息子が、父親である彼と母親である彼の妻に対し、包丁を振りまわすようになったそうです。息子はすでに独立している身。ところがたびたび家にきてはそんな行動に出ていたといいます。
どうして自分たちの息子が、突然そんなふうになってしまったのか。かなり悩んだそうです。しかし原因がまったくわからないままに、就寝中はいつでも逃げだせるようにと靴を履いて寝ていたそうです。
恐怖心は日ごとエスカレート。やがて夜は友人に泊まってもらうことになりました。しかしその友人も息子を恐れるあまり、こっそりと枕の下に包丁を隠して寝られない夜を過ごしたとのことでした。
そして今、彼はいつ息子が家にやってきて包丁を振りまわすかわからないからと、昼間から雨戸も閉めてひっそりと暮らしています。
これら一連の悲劇は、守り神の白蛇を焼酎漬けにしてしまったことと何か関係があるのでしょうか? 私には白蛇の祟りのように思えてならないのですが……。
(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)
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