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うらやましかっただけなのに…「隣の爺」の悲喜劇/黒史郎・妖怪補遺々々

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」!
今回は昔話でおなじみのバイプレイヤー「隣の爺」の悲しき顛末から補遺々々します。

文・絵=黒史郎 #妖怪補遺々々

昔話の悪役

 関敬吾『日本昔話集成』の目次を見ると、「隣の爺」という章があります。
 昔話における「隣の爺」とは、主人公の家の隣に住む爺さんのことです。昔話によく登場するキャラクターで、とくに主人公が正直者で優しくて無欲な爺さんですと、隣に住んでいるのは強欲で残酷な性悪爺さんであることが多いです。これは爺さんに限らず、婆さんのこともありますし、夫婦そろっての場合もあります。
 性格の悪さもいろいろで、金にいじきたない程度ならまだいいのですが、よそ様が大事にしている飼い犬まで殺してしまう危険な爺さんもいます。
 昔話の主人公は大抵、ありえないくらい良い人柄なので、そんな爺さんとも大きな隣人トラブルになりません。

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