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古い学生寮に住み続けている霊の話…ほか/ミステリー体験

戦前に建った古い学生寮。そこで快適に過ごしていたある真夏の夜のこと。夢の中に見知らぬ人物が! 氷のように冷たい手をした薄気味悪い謎の人物。この世のものか、はたまたあの世からの訪問者か。真相は今も闇の中……。

イラストレーション=不二本蒼生

学生寮の夜

◆林田恵子/栃木県足利市(51歳)

 通っていた大学には学生寮があり、私は3年間ほどそこでお世話になっていました。
 その学生寮は戦前に建てられたもので、造りはとてもモダン。アンティークの好きな私は、当時、その学生寮に大きな魅力を感じていました。単に古いだけでなく住み心地もよく、私は満足しながらそこで暮らしていました。
 あれは、私が、そんな充実した学生生活を送っていた、ある夏休み前の暑い日のことです。
 その夜、私はアルバイトの疲れが出て、熟睡していたように思います。
 そして奇妙な夢を見ていました。
 夢の中で私は、暗闇の中、階段を昇っていました。階段の上のほうは少し薄暗くなっていますが、足下は真っ暗でまったく見えません。

 そのうち上段のほうから、トン、トン、トン、トン……と、だれかが階段を降りてくる足音が聞こえてきました。
 階段の上を見あげると、黒い人影のようなものが見えますが、顔などはまったく見ることができません。
 恐らくその人影は、私がこうしてここにいることさえ気づいていないでしょう。何しろ私の周囲は真っ暗なのですから。
 しかし私には、自分が昇っているこの階段の幅が極めて狭いことがわかっていました。階上から降りてくる人物と階段上ですれちがう余裕などまったくありません。
 それでも、上段からの足音はトントン、トン、トンと、わずかなためらいも見せずに降りてきて、どんどん私に近づいてきます。
 そこで私は、自分がここにいることを知らせようと声を上げました。しかし相手には私の声が届かないのか、かまわず降りてきます。
 そして、やがて私のすぐ目の前にまで……。
 私は相手を押しとどめようと、とっさに左手を前に突きだしました。
 すると――その瞬間、何と相手がいきなりギュッと強く私の左手をつかんだのです! !
 当然ながら私は、すぐに自分の手を引っこめようとしましたが、相手の力が強く、離してもらえません。
 しかも、相手の手の、なんと冷たいことでしょう。その冷たさが、自分の全身を駆けめぐるのを感じながら目覚めました。

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