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日記:鳳来寺に行ってみた!

仙人開山の仏教寺

奥三河に位置する鳳来寺は、西暦703年に利修という仙人によって開山されたと言われている。なんと。仙人なんて居たのか。この仙人にまつわるエピソードはなかなか面白い。300年近く生きたとか、鳳凰や龍を乗り回したとか。三匹の鬼を手懐けたとか。鳳来寺は利修仙人が文武天皇の病気を神通力で治した褒美に開山させてもらったらしい。何とも不可思議な人物だ。
そんな鳳来寺はなかなかに立派なお寺で、高野山に匹敵する規模のようだ。小林一茶が句を残していたり、徳川家康の生誕にも関わっていたり、なかなか歴史も深いらしい。Wikipediaを見ると廃り盛りを繰り返したようで、歩いてみるとその歴史を実感できるかもしれない。

今回は、少し病みつつあった気分を転換すべくそんな鳳来寺を参拝することにした。

鳳来寺山のマップで妄想を嗜む。

鳳来寺山のマップ

できればクリックして拡大してみてほしい。鳳来寺山の参道は左下の三の門から始まり、趣のある民家やお土産屋、学校のある道を進む。脇にある十二支の文字はかっこよい石板で、楽しい道中が続く。コレクション欲が働き石板を写真に収めることにした。が、2枚撮りそびれていた。

しかしこういうマップは見るだけで楽しい。ついドラクエとかのRPGのような世界を妄想してしまう。利修仙人の伝説を追うRPG。道中にはきっと鳳凰や龍が出現する。仙人を目指す主人公は、モリアオガエルやコノハズクらと出会いアイテムをもらったり、寺院で修行してレベルアップしたりしていく。途中で出会った僧侶の力を借りて、石板に封印された十二支を召喚し、仲間とする。そして本堂に巣くう人喰らいの鬼との決戦へ向かう。主人公の武器は古武術とお経だ。途中で小林一茶と俳句を詠んだり徳川家康と出会うエピソードがあるかもしれない。鬼を倒して神通力を獲得すると、次は山頂のラスボスだ。そこにはきっと龍がいて、主人公は鳳凰に乗って戦う。倒すと利修仙人が残した不老長寿の秘宝が手に入り、遂に仙人となる!そして平穏の訪れを悟った主人公は、山中に入定していくのだった。

いやぁ実に楽しい。誰か作ってくれ!

封印されし十二の使者。羊さん、猿さんごめんなさい。見逃しました。
道中の硯屋さん。外壁に埋め込んだ硯?のパターンが面白い。

妄想しながら道中進むと、鳳凰に乗ったち〇ぽこ丸出しの利修仙人がお出迎えしてくれた。なんとかわいらしい仙人なのだ!ち〇ぽこ丸出しだがほっこりしてしまった。しかし、そこから先は石段のある山中だ。真夏に行ったのでこの石段がなかなかきつかった。なんと1400段近くあるらしい。これだけの石を山の中に運び込むのはどれだけ大変な作業なのだろう。昔の人恐るべし。

鳳凰に乗ったかわいい仙人様。右手の風車がとてもおキュート💛

いざ山中へ

山中は殺生禁止の戒律があり、動物が豊富だ。トカゲやヘビやワタ虫などに遭遇し、非日常を経験できる。参道脇には廃れてしまった寺跡がいくつも散見された。いろいろな宗派の寺跡があり、最盛期には延暦寺のように多くの僧がここで修行していたことが想像できる。小林一茶の句が石碑に残されていたり、樹齢800年の杉があったり、立派な門があったり、、、。ひたすら荘厳である。

虫や動物の声、風で植物が擦れる音、川のせせらぎ、木の間から射すほどよい木漏れ日、溢れるマイナスイオンの澄み切った優しい空気。石段を登ることによる適度な疲労感。穏やかなゆらぎの中に身を任せ、移ろう時空を味わわっていると、縮こまんでいた心が和らぎ、少し膨らんで、徐々に充足していく気がする。自然と調和するような感覚だ。これが「梵我一如」というやつなのだろうか。偉大な自然を前に、気持ちが幾分か楽になった。いつか全身で、頭からつま先まで、あらゆる内臓も使ってこの感覚を味わってみたいものだ。

しかしそんな充足も束の間、40度近い猛暑には勝てなかった。熱中症になりながらも参道を進んでいく。途中で完全にばててしまったが、すれ違った参拝客に水を恵んでもらい、何とか本堂へ向かうことができた。本当にありがとうございます!一命取り留めました!

樹齢800年の傘杉。小林一茶や徳川家康も同じ杉を見ていたのだろう。
こうした日本建築は本当にかっこいい。有機的で自然との調和が素晴らしい。
トカゲさんもいるよ。
小林一茶さん。頭に鳥さんがのっておるぞ。

そして本堂へ…

本堂前の物見小屋で休んでいると、ここでも水を恵んでいただけた。何ともかたじけない。ありがとうございました。これで一気に回復することができた。本堂まで行くと自動販売機があったので、大量に買って何とか熱中症を克服する。売店もあってアイスも売っているようだった。山頂までは体力が持たないだろうから、悔しいがすぐ近くの東照宮だけ見て今回は下山することとした。

東照宮。華美な装飾がおもしろい建築だ。よく見ると徳川の家紋がいっぱいある。隠れミッキーみたい。

東照宮には徳川家康誕生にまつわる逸話があり、歴史的な場所なのだと実感する。歴史というと教科書で暗記するものという印象が強く、なぜだか別世界の話に感じてしまっていた。しかしとんでもない。確実に現在とつながっているではないか。その証拠がここにある。いくら文明が進んで生活の仕方や価値観が変わってしまっていても、我々は歴史の延長線上にいるのだ。木材や狛犬を削る職人、美しい装飾を施す職人。そういう人々がこの同じ空間に存在し、ここに歴史や美や伝統を残そうとしてくれていたのではないか。間違いなく我々はご先祖様たちと繋がっている。そう思うとなぜだかホッとした。

トンデモ話に聞こえる利修仙人の伝説も、確かにあった話なのだろう。これを現代の常識で語るのは不適切ではないか。そう思うと、そう思うだけで、なんだかとてつもなく面白い世界に生きているのだと実感できる。きっと龍も鳳凰も鬼も本当にいたのだ。バカバカしいかもしれないが、そう思ったほうが楽しいではないか!歴史をデタラメ物語とするのか、楽しいファンタジー物語とするのか。しかしそのファンタジーは、実はノンフィクションかもしれない。「鬼骨入り」と記された石櫃がこの鳳来寺で見つかっているそうだ。

戦後、本堂の再建工事の途中に「鬼骨入り」と彫られた石櫃が発見され皆が仰天した

http://ryuuranokai.blog.fc2.com/blog-entry-477.html

参拝を通して

非常に実りのある経験ができた。かわいい石板や石像が豊富で飽きることなく参拝できる非常に楽しいお寺であった。歴史を感じることができ、歴史観を変えることもできた。熱中症になり、途中でばててしまったが、人々の優しさに触れ、荒んでいた心が吹っ飛んだ。本当にありがとう。

まだまだ先に奥の院があったり、山頂まで行けたりするので、いつかリベンジしたい。この記事を御覧いただいた方もぜひ妄想に浸る旅をしてみては。

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