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ブレイキンのオリンピック競技化と格差社会に関連した心配

2024年のパリオリンピックでブレイキン(ブレイクダンス)が競技として採択されたとのこと。


ブレイキンはHIPHOPカルチャーとして発展し現在に至っている。
現在では世界中でそれを愛するひとがいて、様々なところで熱狂的なイベントが開かれている

オリンピック競技になるということで、「bboy bgirlみんなで盛り上げていこう!」という雰囲気が高まっているが、わたしはそれに懸念と違和感がある。

その懸念は、「HIPHOP、ブレイキンは表現の多様性、人種などに関わらず差別のないカルチャー」というようなことを大事にしながらも、わたしはそれが向かっている方向は格差社会に迎合していくものではないかということ。

ブレイキンをオリンピック競技化に向けて奮闘している運営に関わるひとたちの声をいくつか聞いた。

「ブレイキンだけで億万長者になれるかもしれない」
「社会的地位の向上になる」
「ブレイキンが国や企業に後押しされる」
「それだけで大学入試に合格するようなチャンスにも」
「選手を育てるコーチを育成していくことも必要」
などなど、、。

オリンピック競技化ともなれば企業や国が金メダルを取らせるために多くの支援をしていくこととなるだろう。そして選手と言われるひともその期待に応えることで華やかに脚光を浴びていく。

能力があるひと、実力のあるひとは結果としてお金や社会的地位を得られることになるかもしれない。

しかし、今はまだわからないが、わたしはその能力や実力は本人の努力だけのものだけではなく、そのひとの育った環境にも左右されていくのではないかとの懸念がある。

学歴やスポーツの成績にその子どもの育った環境、つまり親の経済状況が比例しているのは調査の結果でも明らかになっている。それに似たような状況がダンスの世界でも起きていくのではないかと思う。

※ 「子どものスポーツ活動、親の経済事情で差 世帯年収400万以下の6割、費用や送迎が負担で断念」
https://lite.blogos.com/article/283452/?axis=&p=1

※「「貧困による教育格差は幼少期から」日本初のデータでわかった学力・生活習慣格差」
https://www.google.co.jp/amp/s/m.huffingtonpost.jp/amp/2018/03/18/poverty-2018-0319_a_23388934/

昨今ではダンスの練習は、スタジオが運営しているレッスンに通うことが一般化している。そして一流のプロのダンサーから指導を継続して受け続けられ、やる気を維持していくことができるひとがさらに向上していくという状況にもあるのかもしれない。そしてそのためには親からの大きなサポートが得られることが条件のひとつになる。
そのような状況は学歴や他のスポーツの世界の状況と似てきている気がする。

 オリンピックと格差社会について書かれた論文のなかに、『近代スポーツ・近代五輪そのも のの中に,能力主義的スポーツを主流化させ, 公正さと平等さへの配慮を希薄にさせ,結果と して疎外・不平等を自ずと創り出す性向が埋め 込まれているとみることができる』※
という言葉がある。

また『なぜならエリートスポーツのロジックはまさに最高の 適者を選ぶことにあり,ヒエラルキーを築き,差別的 カテゴリーを作ることだからである.』

※「オリンピックと格差・不平等」
https://jsmpes.jp/content/files/article/h29/articles%20for%20the%20special%20issue-shimizu.pdf

といったように、競技スポーツとして際立たせていくことで、それは能力主義と、ヒエラルキーを築いていくことに関連していくこととなるのではないだろうか。

ブレイキンの競技化に関わるひとの言葉で「選手を育てるコーチ」についての言及もあったが、それこそコーチの指導を受けられるということは、そのような能力のある人たち一部のひとの特権的なものの存在を認めるということとのようにも感じる。


 BLACK lives matter運動にみるように、黒人が白人警察官に殺害されたことを発端に、各地でデモ活動が行われ、「HIPHOPや黒人文化の恩恵を受けているひとは立ち上がろう」というような動きが日本のブレイキンやHIPHOPシーンでもみられていた。

差別問題の背景にあるのは格差社会や貧困の問題、資本主義の問題など複雑に絡んだものがあると考える。
 しかしブレイキンのオリンピックの競技化に関連して、それが格差社会や貧困についてどう関係していくのか、という考え、懸念をもった話しをわたしは今まで聞いたことがない。

※ 「アメリカ 白人の若者たちも訴える「構造的な差別や格差」」
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/06/0630.html

 日本中で、世界中で、ブレイキンのオリンピック競技化について盛り上がっているなかで、それと少し変わった考えを言うということに、わたし自身抵抗感を伴い、なかなかこのような考えは言いにくい状況になっているようにも感じている。

しかし、貧困から生まれたカルチャーであるからこそ、それが今孕んでいる貧困についても問題についてもう少し考えていけたらと願う。Black live matterに言われるような人種差別に関しての盛り上がりが日本でもあるようなら、今回の件に孕む可能性のある貧困や格差社会の課題についても考えていけたらと期待する。



また、付け加えて、ブレイキンのオリンピック化の運営に関わっているひとが、大学受験のことについても言及しているが、昨今の日本では様々な入試方法で大学に入学するようなことも増えている。それを大学全入時代、ユニバーサル型時代の特徴とも触れられている文献もある。

『日本は今や大学全入時代を向かえており、ユニバーサル型時代の大学では、一般入 試以外の様々な入試方法で大学に入学する学生が増加していることである。そのため大学に進学す る動機や学ぶ動機を持たない学生が進学してくることが問題点として挙げられている』※

さらに『スポーツ推薦で入 学した学生の入学後の最大の問題点は、学力と学習意欲の低さであると言われている』
※ 「大学入試の多様化と学力格差」
https://core.ac.uk/download/pdf/267849799.pdfと言われている。

もし、結果的にダンスで推薦入学ができたとしても、その後どのような状況になっていくかと考えると、課題も多いように感じる。







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