【12日目】感情を決める「無意識の信念」と『ABC理論』(ニンゲンのトリセツ)
◆感情は「コントロール」できないの?
しつこいようですが、僕たちを構成する三つのパーツは
・アタマ
・ココロ
・カラダ
の三つです。それらには「優先されるもの」「本体」などというものはなく、三つが対等な立場で『あなた自身』というものを形造っています。
ですが、そのうちの二つ「アタマ」「ココロ」というものは、よくケンカをするんでしたね。それは、それぞれが別の動機で動くからで、アタマは「現在の周囲の状況など」を見て、そしてココロは「好き嫌いゲージの針」を見て、考えや感情を出してくるんでした。
もしあなたが今まで「感情をコントロールできない」ことに悩んできたのだとしたら、それは実は「とても当たり前の現象」だととらえ直すのがいいのかもしれないと思います。なぜなら、僕たちは本来、アタマが出してきた考えで、直接感情をコントロールできない『造り』になっているからなんです。
一方で、一見上手に「感情をコントロールしている」ように見える人もいます。その人たちはどうしているのかというと、前回話した
カラダ → アタマ → ココロ
というプロセスで感情が起こってくるところは同じですが、このときの
「アタマ」
の部分に、一工夫あるのです。
◆チョコレートケーキと『信念』
そもそも、このプロセスが実際にどんなふうに起こっているのか、ちょっと復習してみましょう。
まず、カラダが周辺の情報を集めます。今回は例として
「チョコレートケーキ」
を使いましょう……あなたの目が「茶色くて四角い、小さな物体」を見ます。そして鼻が「独特の香ばしい香り、甘い香り」を嗅ぎ分けます。
それらの情報は、神経細胞によって脳に送られます。そして脳が過去に見たものと体験したことに照らし合わせて、この物体が何であるか、自分にとってどういう存在かを判断します。この「脳の機能」こそが、アタマの働きです。ここまでのプロセスを、アタマはたいてい完全に無意識にこなします。
無意識にこなした「判断」を、アタマが今度はココロに送ります。そしてその「判断」(この場合はチョコレートケーキが目の前にある、ということ)を『好き嫌いゲージ』に照らし合わせて、ココロは感情を出してきます。
その針の「動く方向」と「動く量」によって、僕たちには感情がわき起こります。チョコレートケーキが好きな人は「好き」寄りに、ニガテな人は「嫌い」寄りに針が動くはずです。「好き」寄りに動いた人は、美味しそう! 食べたいなぁという気持ちになり、「嫌い」寄りに動いた人は、うわっ、ニガテな食べ物があるなぁ……とそれを避ける行動を取りたくなります。
この、アタマが「無意識に行う判断」の基準になるものこそが、前回からちょくちょく登場している
『信念』
というものです。この『信念』が、無意識の判断と、そのあとの「好き嫌いゲージの動き」を決めています。
先ほどのチョコレートケーキの例でいうと、もしアタマの中に
「チョコレートケーキはおいしい食べ物だ、自分の好みだ」
という『信念』があった場合、その後好き嫌いゲージは「好き」寄りに動くはずです。逆に、アタマの中に
「チョコレートケーキは苦くてまずい、自分の好みじゃない」
という『信念』があった場合、その後好き嫌いゲージは「嫌い」寄りに動くはずです。
◆感情のプロセスを説明する『ABC理論』
このように
カラダ → アタマ → ココロ
という感情のプロセスが起こるとき、その真ん中にある「アタマ」の中にどのような『信念』があるかによって、最終的に起こってくる感情が変わるものである、ということが分かっています。これは心理学の世界で
『ABC理論』
と呼ばれるものです。このABC理論は、認知行動療法の臨床現場でもよく使われるもので、僕がアタマとココロと呼んでいるパーツがどのように働いて感情を生み出しているかを説明するツールなんです。
では次は、この『ABC理論』について詳しく解説します。
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)