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3度目の引越し、余裕を見せる


 人生で3回目の引越しが佳境に入っている。すぐ開ける段ボールは黄色いテープ、割れ物が入った段ボールは赤いテープ。

 初めての引越しは、生まれ育った築150年の日本家屋からの引越しだった。玄関は土間、家の裏には竹藪と謎の沼、狸(アライグマ説もあり)が屋根裏で子を産み育てる。そんなハイパーネイチャーな家が、いよいよ住めないほど古くなって引越しが必要になったのだ。

 当時私は、中学3年生になったばかり。それまで自室にため込んだありとあらゆるオモチャという名のガラクタをどうするか、結果的にほとんどそのまま持って行って母の顔をひきつらせた。当時の私は物を捨てることに対して恐怖感が強かった。
 今も昔も八百万の神を信仰しがちで、特に幼いころは人間の友達が乏しい分、枕元の電気スタンドやもたれかかるクッションと友達として拠り所にしていた。捨てられない。捨てるという選択肢がそもそもなかった気がする。


 2回目の引越しは、去年の今頃、地元から都会へ大移動を果たした引越しである。ここで私は初めて断捨離を頑張った。収納スペースが寛大な一軒家育ちから初めてのマンション、とにかく物を減らさなければならない。
 ちょうどその時の私は、断捨離や汚部屋からの脱却にまつわる本や漫画をたくさん読んでいた。おかげで断捨離がはかどった。オモチャたちの大半とお別れできた。幼いころ分け与えた魂の気配が残っているものだけ、ひっそり残して連れて来た。奴らは今回も持っていくつもりだ。


 3回目の引越し、更に物を減らした。己が管理できる、しまった場所を覚えて置ける量の物と過ごそうと思ったのだ。身軽な人間に憧れたのもあるかもしれない。ルパンみたいに、いつでもミニバンで逃げ出せる身軽さにしびれる。車運転できないんですけどね。
 2回目の引越しで物を減らしたおかげで、かなり楽に箱詰めできている。1年前で記憶も鮮明だから、余ったシーツで割れ物を包む方法でおどおどせず作業を進められた。


 まめこ、まうたろう。去年引っ越してきて出会った地域猫たち。もう2日3日しか残っていない、会いに行こうか?
 ・・・絶対寂しくて悲しくて体調悪くなるからやめておこう。また会いにくればいい。

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