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【にわをめぐる】 北方文化博物館


新潟の豪農、八代にわたる伊藤家の遺構である北方文化博物館。
伊藤家の元邸宅が残される敷地には、銀閣寺ゆかりの名庭師・田中泰阿弥が五年がかりで完成させた庭園があります。野趣に溢れた力強い庭園、豪奢でありながらも端正な設えの建築、古今東西から集められた歴代当主の蒐集物、正三角の茶室など、数寄者としての業とユーモアが感じられる素晴らしい場でした。その魅力をご紹介します。

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① 名庭師・田中泰阿弥の''大作''池泉鑑賞式庭園

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https://www.youtube.com/watch?v=Yl-qlEn9aEw

母屋の大広間から望むお庭の風景。
飛石が起伏のある奥側に吸い込まれていくように配置されます。それによりその先に山道があるような、空間のひろがりが感じられます。

高木が半円状に、弧を描くように囲われることで自然に包み込まれるような安心感があります。

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樹木の根元には、'根締め'として景石と共にツツジ類が添えられる。それにより樹木の足下の抜けを抑える視覚的な重しの役割を果たし、奥行きのある景色が作り上げられているように見えます。

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灯籠などの添景物は、眺める中でふと気づくくらいに風景に溶け込むように配されています。添景という文字通り、景に添えるように、あくまで引き立て役として配置されており、違和感がなく、快さを感じます。


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大広間の手前の中庭。まるで河川跡のような水の勢いがある枯山水。

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②入口 /植物の彫刻群

入口は、樹種を統一せずに、多様な植物が植えられています。
彫刻のように緊張感のある樹形でまとめられ、庭師のセンスがひかります。

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竹林の中で石造物を群として配置。どこか和む情景。竹の木漏れ日が揺らめいて、演劇的な雰囲気さえ感じます。

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③ 正三角形の茶室''三楽亭''

孟子が唱えた「三楽」を題材として建てられた、三角形の茶室''三楽亭''。
そのカタチに沿って間取りが組まれ、菱形や三角形の畳があつらえられる。面白さを超え、狂気さえ感じるひょうげた茶室。

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④ 名物の大藤棚

樹齢150年の怪木の藤の妖艶さを活かすように、藤棚は建物にまで連結して延ばされる。「天井舞台」とでもいう様な、頭上の景色の見せ方は藤でしかできない演出。

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⑤ 八重桜 / 蓮池

この時期に、八重桜を美しく見せるために、心を砕いて作られたことがわかる空間づくり。絶妙に八重桜が繋がり、一つの風景を作り出しています。

蓮池と桜、空がつながる爽快な空間。

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⑥ etc

シダレザクラと大黒様を合わせたり、灯籠と植物、竹でんわやツリーハウスなど、施主のユーモアと庭師の技術力によって作られた場づくりも面白い。

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この季節にこの場に訪れた、人々に何を見せるかを考え抜き、聡明に、想像力を尽くして表現する。
そんな庭師の仕事が随所から感じられ、植物の造形力を引き出す仕事は、現代美術になり得ることを教えてくれます。

北方文化博物館。ここは歴代当主の遺構を保存、展示する博物館である以上に、現代人へ向けた美術館だとおもいました。

新潟市内から車で20分程。おすすめです!

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【 北方文化博物館概要】

住所:新潟県新潟市江南区沢海2-15-25
駐車場:普通車有り
営業時間:4月~11月 9時~17時、12月~3月 9時~16時30分
定休日:無休
●大人:800(700)円
●中小学生:400(300)円



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