魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第13話 魔王、冷んやりする。
我輩は魔王である。名はトラ吉。
どうやらこの世界には四季というものがあるらしい。
そして、今は夏なのだという。
まぁ、そんなことはどうでも良いのだが、とにかく暑くてたまらんのだ。
魔王であった頃の身体であれば、この程度の暑さを乗り切るなど造作もないのだが。
どうもこの猫という身体は毛が多く暑いのだ。
人間は体温調節のために汗をかくらしいが、この猫という動物は足の裏などの一部分からしか汗をかかん。
しかも、その部分に汗をかいたからといってあまり涼しくはないのだ。
この身体で夏とやらを乗り切れるのかいささか心配になってくるわ。
我輩のしもべであるチャッピーたちはどう夏を乗り切っているのやら。
だが、我輩は魔王ぞ。
このような暑さは魔界の……魔界の……に……比べたら……。
「ちゃーちゃんまた伸びてるねー、暑いのかな?」
「猫って人間より少しは暑さに強いって聞くけど、明らかに俺たちより夏バテしてないか?」
主人①②よ、いかなる困難をも乗り越えてきたこの魔王である我輩が夏などというわけのわからんものに負けるわけが……なかろう。
「しょうがない、こないだテレビでやってたあれ買ってきてみようかー。」
主人①よ、何かこの夏を乗り切るための魔道具があるのか?
早くそれを我輩の元へ持ってくるが良い!
ーーー
「じゃじゃーん! アルミねこ鍋〜」(ド○え○ん風)
「ちゃーちゃん用のベッドがどんどん増えていくなぁ。」
「いいじゃない! 家での最優先事項はちゃーちゃんなんだから!」
「は、はぁ。」
主人①よ、我輩が最優先事項であることなど当たり前であるぞ。
お、それが例の魔道具であるな?
見た目からして寝床であろう。
我輩の身体に合うちょうど良い丸みではないか!
「ちゃーちゃん! じゃあ早速寝てみようか!」
うむ、我輩を持つことを許す。
「よいしょ、あれ……また重くなってないかな?」
主人①よ、口を慎むが良い。
「ちゃーちゃん、下ろすよー」
『どす!』
な、なんだこれは!?
「ほら! 大きさもぴったりだよ!」
我輩の身体を包み込むような丸みもさることながら、この感触は一体なんなのだ!?
体の熱がこの「あるみねこなべ」とやらにどんどん吸収されていくではないか!!
しかし、この魔道具は危険なものである可能性が高い。
なにせ、我輩の体温を次々と吸収しているのだ。
長時間この「あるみねこなべ」とやらに寝ていては体が凍ってしまうかもしれん。
これこそ諸刃の剣、呪われた魔道具であるな。
しかし、どうにもこの冷たさが眠気を誘ってくる。
ここで寝ては命を奪われるかも知れんというのに……
だが、我輩は魔王である。
少しぐらい体温を奪われたぐらいでは死ぬまい。
ちょっとだけ寝るぐらいなら大丈夫だろう。
この魔道具の実力も調査せねばならんしな。
これは仕方のないことなのだ。
決して冷んやりして気持ちいいからなどという低俗な理由ではないのだ。
では、我輩は「試しに」寝てみるとしよう。
そう、その時が来るまでは。
魔道具の力に驚きを隠せないトラ吉
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