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これは、私の物語だ。-ヤマシタトモコ「違国日記」を読んで-


-『これは私の物語だ』と思ってくださる人がいたら、その方のために書いているんだと思います。


違国日記を今出ている7巻まで読み終えたとき思ったのは、まさに『これは、私の物語だ。』だった。

槙生の考えていることも、朝の悪気のなさも、むつの「わかった」も、全部知っている気持ちだったので、読み進めるほどにうっとなる。知っているけれど言語化できていない気持ちを自分ではない誰かが代わりに表現してくれた気がして、うれしさと悔しさがごちゃまぜになった”うわっ”が何度も漏れる。


作品の感想を書こうと思って、いろいろ調べていたら違国日記についてのトークイベントの記録がまとめてあったので、読んだ。
いつもなら、イメージが崩れるのが嫌で作品の裏側や作者の言葉はあんまり知りたくないけど、違国日記について調べていたら、冒頭の言葉が引っかかってきて、それがすごく気になって読むことにした、らめちゃくちゃ泣いた。


それはまあ泣けた。冒頭に掲載し、タイトルにも使わせていただいた言葉はもう本当にそれ!と思うんだけど、それ以外のお話も、解釈の一致過ぎてヤマシタ先生を崇拝したくなる。


- 読者にやさしい話を描こうとおもった


違国日記を書くことになったきっかけは?という質問に対する答えの中のこの一文は、もう”うわっ”を超えて”ぐはっ”だった。優しくされたいと願っている時期に読んだ。そんで、優しくされた。めちゃくちゃ。

私だけじゃないことがうれしくて、作中でそれが否定されないことがうれしくて、痛いところを突かれた後にちゃんと言い返してくれるのがうれしくて、私は何度もうれしくて泣きそうになる。

槙生が朝を尊重するたびに、あの頃の私も大切にされたような気持になったし、誰かが槙生を理解し、大切に思うたびに私も安心できた。そういう丁寧なやさしさが好きで読んでいたら、作者はちゃんと優しくしようとして書いてくれていたなんて、それはもう愛でしかない。



-この回は女性の性欲を全肯定するぞ!と考えて書きました。

4巻の最後に収録されている20話については、上記のようなこともトークイベントでお話しされていたらしいのだけど、もうこれはも本当にそうで、本当に全肯定されてしまった。まじで救われた。

女性の性に対する価値観ってかなり人それぞれで、パートナー以外となんて絶対ありえない!とかセーフティーでお互い同意しているならいいんじゃない?とか、なんでかしらんがムラムラするとか、まあいろいろあるんだけど、細かい部分をさらけ出して話すのはなかなか難しいし、友人同士でする必要もない話だ。

だけど、どんな価値観を持っている人間だろうと、槙生のような葛藤は抱えていると思っているので、葛藤を可視化して表現してくれたことで、私だけじゃなかった!と叫びだしたいくらいにほっとした。このムラムラからの葛藤の流れを性教育の一環として使いたいくらいに感動したし、全肯定のおかげで自分の性欲との向き合い方についても考えるきっかけになった。


本当はもっともっと書きたいことはたくさんあるんだけど、この作品はきっと私の物語であり、あなたの物語でもあると思うので、たくさんの人の読んでほしいと思う。2021年3月23日時点ではprimereadingで1巻を読めます。

漫画を読んだ人はぜひ、冒頭にリンクを貼ったトークイベントのレポも読んでほしい。またイベントをやってくださるなら、絶対に参加したい。



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