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ブラック企業に3年間勤めてみた

誰も読まないnote(私はエッセイのつもりで書いている)を始めたきっかけは、3年間務めた会社を退職するまでの有休消化期間で暇だったからだ。

勤めている間は文字通り必死だったのであまり気づかなかったが、今思えば普通にブラック企業だったと思う。
せっかくなので記憶に新しいうちに、働いていた時の話をしておきたい。

業種は伏せるが、外から見ると「そこそこいい大学を出て、しかも向上心の強い人が入る会社」というイメージか、あるいは「何してるかわからないがなんかかしこぶって高給をもらっている会社」というイメージなんじゃないだろうか。
内情は(少なくとも私がいた会社は)鬼のようにメンタルが強い人間が時給で換算するとアルバイトのような給料で馬車馬のように働く会社である。

まず、労働時間は産業革命当時くらい長かった。
一番忙しいときは月400時間くらい働いていた。私にとっても1か月は平等に720時間なので、月の60%くらいは仕事をしていた。
平日は朝5時くらいに起きて資料作成や会議の準備。8時ごろから21時ごろまでほぼぶっ続けで何かしらの会議があり、終わったらまた資料作成や会議の準備を翌2時くらいまでやる。少し寝てまたPCを開く。
土日は休みということになっていたが、Slackのランプは多くの同僚が緑だった。平日に片づけられなかった残務処理がメインだが、当たり前のように社内や社外の会議が入った。

給料は同年代の平均よりは高いが、400時間で割り戻すと悲しい金額になるので途中からあまり計算しないようにした。言わなくてもわかると思うが、もちろん残業代は1円もない。

これだけ仕事が忙しいと、日常生活にもいろいろと支障が出る。
当然体調はおかしくなる。身体面で言うと2か月に1回くらい高熱が出る。39度を超えて全く頭も回らないが、代わってくれる人はいないのでその頭で会議に出続ける。親知らずを抜いた後出血が止まらず、口の端から流血しながらしゃべり続けた時もある。
睡眠不足で自律神経もやられるので、仕事中急に動機が止まらなくなったり、急に文章の理解ができなくなったりして、お薬の世話になる。
実は睡眠時間が足りなくても日中眠くなることはない。起きている時間の7割は仕事なので、頭のオンオフができず、むしろ眠れなくなる。お薬のお世話になる。
プライベートの予定を入れる隙間がないので、友人からの誘いは定型文で断る。「ごめん、直近忙しくて。落ち着いたら連絡するわ!」落ち着くことはない。友人が減る。

在職中にあった、今思うと意味がわからないエピソードもいくつか紹介したい。

飲み会について。
体育会系の人が多い(というか体育会系じゃないと心身が持たない)ので、忙しくても社内の飲み会は頻繁に発生する。
ある月、私が月間MVP的な賞をいただいたことがあり、仲の良い同僚が祝勝会を設定してくれた。(こういった「人の好さ」みたいな部分も、ある種ブラック企業の特徴だ。)
ただ、月間MVPとはつまり「一番忙しくしてめちゃくちゃ働いた」メンバーとニアリーイコールなので、当日どうしても私が参加できない状況となった。
「好意で設定いただいたのに大変申し訳ございません。」結局私の祝勝会は私抜きで実施された。飲み会を断るために頭を下げたのも、自分の祝勝会を欠席したのも初めての経験だった。

食事について。
8時から21時ごろまで会議と先述したが、これは記載の通り8時から21時まで会議という意味で、休憩時間はない。リモート会議でカメラをオフにすると怒られる。しかし人間は食事を採らないと死んでしまうので、私が編み出したのが「画面外ウイダー」である。
デスクの遠くにあるものを取るフリをして顔を画面外に出し、その一瞬でウイダーを口に含む。すぐ戻って、噛まずに嚥下する。
これを数回繰り返すことが私にとっての「昼食」だった。

最後に少し汚いが、排泄について。
1時間の会議が50分で終わればいいが、やはり議題は多いので1時間ギリギリまでやることが多い。
次の会議に間に合わせないといけないので、トイレは1分以内で済ませる必要がある。
溜まった小水を全部は出せないので、7割くらい出して無理やり止めて会議に参加する。
そうすると何が起こるか。まず、残尿を切れていないのでパンツにつく。流れた小水が陰嚢に垂れて、めちゃくちゃ痒くなる。激務の反動は陰部に来る。
また、変な排泄癖がつくため、夜間に漏らしてしまうこともあった。これを繰り返した結果、「もしかして頭おかしいことしているんじゃないか」と気づき、翌週上司に退職の意向を伝えた。退職理由はおねしょだった。

いろいろと書いたが、あくまで笑い話として書いており、私自身この会社に3年間勤めたことを後悔はしていない。
得られるものは多かったし、先述の通り上司同僚部下、優秀でいい人が多かった。自分自身の限界に達しただけだと思う。

自分にとっての限界のサインを見逃さないこと。ここまで読んでいただいた優しいあなたへのアドバイスです。


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