ふたりの世界新生紀
――これはもう誰も知らない、愛の神話――
「ねえ」
暗くて、でも柔らかくて、とても温かい。
今わたしが居るのは、そんな場所。
「もう一度つくろうよ、わたし達の世界を」
「そうね、前の世界は全部『呑み込んじゃった』し」
ああ、声が聞こえる。
彼女にはたくさんの呼び名があったの。
世界を喰らいし災厄。
終末の使徒。
アーク・エネミー。
太陽と月を呑むもの。
黙示録の獣。
だけど彼女の本当の……もっと素敵な名前をわたしは知ってる。
「ユナちゃん、ちょっと昔の話をしない?」
「そうよねミサキ、ここから世界一つ造るのは少し疲れるもの」
もしもわたし達を見ている誰かがいたら、星一つない虚空を星系の大きさの怪獣か何かが飛んでるみたいに見えるかも。
でももうわたしの知ってる世界には誰もいない。ユナちゃんが全部食べちゃったから。
その前の世界の事を覚えてるのは、もう彼女とわたしだけ。
そしてわたしは、彼女の中でずっと一緒に、宇宙の果てだって行く。
「どうしたのミサキ、もしかしてどこか良くない?」
「いや、いろんな事がありすぎて何から話したらいいかなーって……」
「それなら、ユナと初めて会った時からにしましょう」
――まだ太陽系があった頃の話。
ユナちゃんとわたしが出会ったのは、確か……小学校の四年生の時だったね。
わたしが住んでた田舎の学校に転校して来て、そこで初めて会った。
もう、第一印象で仲良くなれそうって思ったんだよ。
あれ、この話してなかったっけ?
ユナちゃんはあの頃からちょっと不思議な感じがして、クラスの女の子達からは浮いてたけど、わたしはそこに惹かれたの。
自然がすごく大好きで、よく二人で山を探検したり川で水遊びしたりしたね。あの時は本当に楽しかった。
だからユナちゃんのおでこに鱗みたいなあざがあるのを見つけてもわたしは気にしなかったし、前髪で隠して二人だけの秘密にしようっていう事にしたの。
でもこの頃はまだ、わたし達はただの友達だった。
【つづく……】
スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。