見出し画像

冷たい肌の二連星


――夢を見ていた。

限りなく深く冷たい闇の中、何か優しいぬくもりに抱かれる夢。
この感覚こそが……。


《エマージェンシー、エマージェンシー》
《レベル4船内侵入を感知》
《緊急覚醒シークエンスへ移行します》


電脳が瞼閉じたカメラアイにアラートを投影。
カプセルからスリープ躯体が強制射出され、私を覚醒させた。
レベル4侵入、危険な事態だ。機関室機能を喪失すれば宇宙船は航続不可能。
此度のケンタウルス宙域惑星探査任務も水泡に帰す。

緊急用の電磁ランスと光子銃を装備する。
「こちら躯体識別番号XX01、躯体名称リリス」《了解しました》
宇宙船AIと同期しながら侵入者を捜索。
監視カメラログ情報を見る限り、破壊活動が目的ではない。

「では……一体なぜ?」

なぜ自動防衛システムは起動していないのか。レベル4侵入を許したのか。
電子的プログラムでは説明不能な不穏が電脳を満たす。

その時突然AI同期が切断される。
侵入者は近いはず、警戒を強める……この先は観測室。

ロックは物理的に破られていた。
観測室内に入った私の視界に映ったのは、爬虫類人じみた外惑星生命体。
帯電する電磁ランスを構えつつ、目前の生命体の情報をアーカイブ検索する。


「では、貴方はうみへび座O8惑星人の」〈ラ=ミアです、よろしく〉
相手に敵意がないと分かれば話は早い。問題は如何にして何の目的で侵入したか。
〈あたしの船時空嵐に巻き込まれて、物資も底をついちゃって〉
〈ハッチ開けっ放しの漂流船見つけたから、何か残ってないかなーって〉

私の中に再び不穏な感覚。
「躯体識別番号XX01、リリス。至急観測ログと現在地座標を」
《ザザッ……観測ログに重大な破損。現在地座標は……》

AI通信途絶。ここは目的地を遠く離れたレティクル宙域。


〈だいじょうぶ?〉
ラ=ミアが背後から抱き着いてくる。
彼女の太い腕はその温度に反し数値化不能の温かさを感じた。

――ずっと包まれていたい。

――この感覚は……。



【To be continued…】


スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。