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自由を求めて闘う若者たちー渦中のミャンマーに思いを馳せて

ミャンマーの現状を知る

2021年2月1日、ミャンマーで軍事クーデターが勃発し、国家顧問のアウンサンスーチー氏を始め彼女が率いる国民民主連盟(NLD)の政府閣僚や議員の多くが拘束された。普段はミャンマー関連のニュースを頻繁にチェックしていなかった私も、突然の政変には衝撃を受けた。

そんな中、ミャンマー情勢に精通する友人達が日々現地の状況を発信する姿を見て、今回の事態をますます他人事とは思えなくなっていた。

そうしたなかで16日に「在日ミャンマー人の若者有志による軍事クーデターへの反対表明」と題した記者会見がオンライン配信されることを小耳に挟んだ。

登壇するのは、在日ミャンマー人5人と現地在住のミャンマー人1人とのことだった。彼女たちの生の声を聴き、現状に対する理解を深める貴重な機会だと思い、拝聴することにした。

まず在日ミャンマー人のジンさんが、ミャンマーの現状について説明する。彼女らの現状認識としては、1日に発生した国軍のクーデターは明らかに「憲法違反」だという。NLDも、2日に「新たな国会が始まる直前に最高司令官が国の権力を掌握したことは、明らかに憲法違反だ」とフェイスブック上で発表している。本来、クーデターが起きた1日には総選挙後初の連邦議会(国会)が開催されるはずだった。*¹

ジンさんは続けて、軍による「厚かましい行為」は「国民として認めない」と語気を強める。「個人として」ではなく「国民として」と述べているところから、日本にいようと今回の事態は「ひとりのミャンマー人として」受け入れられない、そんな意志の強さを感じた。

抗議デモの様子

プインさんは、クーデターを「理不尽」で「唐突」なものだったと表現する。クーデターがあえてコロナ禍で行われたことに関しては「厚かましい」と怒りのこもった声で訴えた。クーデターから3日が経っても非常事態宣言が解除されなかったことを受けて、国民は非暴力・不服従の抗議活動を始めた。

ミャンマー記者会見2

抗議デモといえば、大勢のミャンマー国民が「鍋叩き」をしている印象的な映像がある。初めてその映像を見た時、何故わざわざ鍋を叩くのだろうと疑問に思った。

実は、ミャンマーでは鍋叩きには鬼退治の効果があると言い伝えられてきたのだという。かつては日本でいう、節分の豆まきと同じような感覚で行われていたのだろうか。今は国民たちが独裁者、つまり国軍を「鬼」に見立てて鍋叩きをするのだと聞いて、早く「鬼は外」が叶う日が来ないものか、と切実に思った。

国軍による人権侵害の数々

だが、そんな私の思いー多くのミャンマー人も同じ思いでいるに違いないーとは裏腹に、国軍は人権侵害を加速させている。9日には首都ネピドーでデモに参加していた20歳の女性が頭部を撃たれて脳死状態に陥り、19日に死亡が確認された。*²ティリさん(職業)はこれを「殺人事件」とし、「1人の命なので本当に悲しくて許せない」と怒りを露わにする。若くして国軍に命を奪われた彼女と残されたご家族のことを思うと、実にやるせない。

抗議活動の取り締まりは厳しさを増すばかりだ。13日夜に、裁判所の許可なしで市民を逮捕できることを制限する法律の条項が停止された。*³国民のデモ参加を阻むため、15日からは毎日午前1時から9時までの間インターネットが遮断されている。

また2月16日現在、国軍は現在個人データへのアクセスを無制限に可能にする「サイバーセキュリティ新法案」の導入を試みているという。*⁴ティリさんはこのままでは「自由が完全になくなる」と危惧し、日本政府による迅速なクーデターへの反対声明の提出を求めている。

改めて、「自由」の脆さを思い知らされる。日本で当たり前の如く自由を享受している私たちも、現状に安住していては自由の「綻び」に気づくことすら出来ないかもしれない。日本の若者の政治無関心を指摘される度に、些か不安になる。

「私たちが欲しいのは民主主義です。自由です。自由を尊重してほしい。命を懸けても、毎日頑張っていきます。次の世代が苦しまないように」

涙声になりながら訴えるティリさんの顔はマスクで覆われていたが、私には彼女の葛藤を超えた決意溢れる表情が見えた気がした。彼女らの自由を、そして命を懸けた闘いを、引き続き見守っていきたい。

参考文献

(注1)朝日新聞『「憲法違反だ」スーチー氏率いるNLD、即時解放求める』2021年2月2日https://www.asahi.com/articles/ASP225V9LP22UHBI00S.html

(注2)日本経済新聞『ミャンマー国軍、ネットを連日遮断 デモ参加の女性死亡』2021年2月19日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM185KV0Y1A210C2000000/

(注3)日本経済新聞『ミャンマー国軍、令状なしで逮捕可能に 法律を停止』2021年2月14日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM140SL0U1A210C2000000/

(注4)日本経済新聞『[FT]ノルウェー通信会社、ミャンマーの情報統制を非難』2021年2月18日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM180OR0Y1A210C2000000/

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