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アクセル・ローズが着ていた Nine Inch Nails のTシャツ

1991年という年はロックという音楽にとって大きな一つの節目があった年だと思います。それは転換というよりもそれまでの流れと新しい流れが関連して交差して生まれた節目のようなものだった気がします。
8月にMetalicaの通称ブラック・アルバムとよばれるセルフタイトルのアルバムが、翌9月にはNirvanaのNevermindがリリースされていて、ほぼ同じ時期にGuns N' RosesのUse Your Illusionの1と2が2枚同時リリースされています。
90年代はいわゆる華々しく産業化したロックがアメリカの世情も反映して、少しトーンを落としたグランジやヘヴィロック台頭されたように簡単に語られることもありますが、グランジ以前にハードロックやヘヴィメタル系のロックがストリート寄りというか過剰な装飾を取り払った雰囲気なままメジャーチャートで1位を取るように売れていたということがあります。
例えば、典型的なグラムメタル、LAメタルの代表だったMotley Cure の Dr.Feelgood や Skid Row の Slave to The Grind がビルボードのチャートで1位になったりしています。
要はロックが時代を象徴する音楽になる土壌は出来上がっていた点で言えば91年は音楽的なカルチャーショックではなかったと言えます。
この辺りの話しはまたどこかでお話しできらばと思うのですが、今回そこから入った理由はメタリカやガンズなど既にメジャー級のバンドに至ってはあくまでストリートの雰囲気だけであって音楽的にはストリートに回帰したものではなく、どちらかというと80年代からの流れを昇華した形の音楽を作って、それまでの自分達の音楽の方向性から大きく舵を切るようなものであったことの方が重要であったように思います。
80年代後半に現れたインダストリアル・ロックの勇、ナイン・インチ・ネイルズのTシャツを着たアクセル・ローズに現れているのだと思います。
アルバムの内ジャケットのグループショットの写真ですし、このころから自分の写真の使用に関してはうるさくなって行っていたアクセルなので、他のミュージシャンのTシャツを着ているのは意図的だったと思います。
電子的な打ち込みのビートとガンズのルーズはロックンロールは水と油のような気がするのですが、アクセルにはガンズの音だけでなく、雰囲気、スタイル、ファッションにおいてもそれまでのイメージからの脱却を狙っていたんじゃないかと、ガンズを進化させたかったんじゃないかと思います。

アクセルのTシャツスタイルについては別の機会に集中的に紹介したいと思いますが、このユーズ・ユア・イリュージョンのジャケット内の写真でも見られるTシャツはこのアルバムに伴うワールド・ツアーのステージ上でも何度も着られているので、アクセルも気に入っていたということが想像できます。
ということで、私はナイン・インチ・ネイルズの音楽はきいたことがなかったのに、このTシャツを見つけた時に即買いしました。多分ころも前回と同様、某有名メタル雑誌の広告欄にあったレコードチェーン店でレコメンドされていたのを見たんだと思います。

インダストリアルなバンドのTシャツなので、配色もいいですしデザインもそれっぽいですよね。
多分、アルファベットを分解して再構築したようなグラフィック・デザインだと思いますが、何て書いてあるかはわかりませんね。
バックの文字はN(エヌ)I(アイ)N(エヌ)でしょうかね。
表が白地に赤のプリント、裏が白地に青のプリントというのもいいです。
Tシャツ単体のプリントデザインとしても秀逸です。一度どこかのブランドがこのデザインを復刻したTシャツを販売していたようですが、余計な文字が入っていたり、プリントのバランスが異なっていました。やっぱりオリジナルが良いと思いました。


購入したのは私が東京に出て来た年ですので、1994年です。
何やら90年代ものが流行っていて、シングルステッチやコピーライトにこだわって収集されている方も多いと聞きますが、アーティスト着用のオリジナルのデザイン性を重視すればコピーライトのプリントとかはそこまでこだわる必要はないのかなと思います。所詮Tシャツですしね。
ということで、こちらは当時、すごく気に入ってよく着ていたものの一つです。プリントも擦れてて色がはげ落ちている箇所もあります。
状態の良いオリジナルデザインのモノはないか探していたりするんですが、復刻ものはないようで、90年もので適正な価格のものが見つかれば購入したいと思っているものの、地が白なのでなかなか良いものを見つけることができません。良さそうなものになるとかなり高額になります。
もし良いものを持っていらして譲ってもいいな、と思っている方がいらっしゃれば是非ご一報ください。

次回も90年代初期の頃に購入したアーティスト着用のものを紹介したいと思いますが、次回のはもの凄く不確かな情報でお話しするので、本当に好きな方のみ期待していただければと思います。

ここからオマケの話しとイラスト(今回は無料にしてみました)

1991年8月31日、Guns N' Roses はUse Your Illusion の発売にともなうヨーロッパ・ツアーでロンドンのウェンブリー・アリーナで公演を行います。場所がウェンブリーなので大規模な公演となり、ガンズの他にQueenのブライアン・メイが2曲演奏したり、Skid Row がオープニング・アクトを務めたりしています。
なんとそれらの大物に混じって Nine Inch Nails(以下NIN) が出演しています。

当時のNIN は1stアルバム"Pretty Hate Machine を89年に出してはいましたが、まだコアなファン以外それほど知られた存在ではなかったですし、ましてやメタル系の音楽でもなければUKのミュージシャンでもありませんでした。Nine Inch Nails のウェンブリーはビール瓶と罵声が飛ぶ荒れたものになったようです。それもNINのセットリストを見てもいた仕方ないことは分かっていただけると思うのです。

Nine Inch Nails setlist  Aug 31, 1991 at Wembley Stadium
1. Now I'm Nothing
2. Sin
3. Physical (You're So) (Adam and the Ants cover)
4. The Only Time
5. Wish
6. Down in It
7. Head Like a Hole

”Use Your Illusion Ⅱ”のラストの曲であるMy Worldはアクセルが一人でレコーディングし独断でアルバムに入れたのだそうですが、バンドが関与していないということでやはり打ち込みのビートやインダストリアルな雰囲気のエフェクトがかかっています。この曲を聴いたメンバーのスラッシュは「これ入れる必要あるか?」と思ったのだとか...
また、当時のアクセルは「最もクールな音楽だ」と言ってNINの曲をMetallicaのメンバーなんかにも聴かせていたとラーズ・ウルリッヒが言っていたり。
ラーズは「当時は理解できなかった」と言っています。

その後、
NINは1994年に”The Downward Spairal”をリリース、そのインダストリアルなビートと効果はそのままに、よりソリッドでノイジーで破壊的な楽曲とTrent Reznor の圧倒的なパフォーマンスでメタル周辺のリスナーも取り込んでアルバムはビルボードで2位の大ヒット、Minstry、KMFDMらインダストリアルなロックのカテゴリを世に広め2020年にはロックの殿堂入りするに至ります。
やはり、Axl Rose には先見の目があったということでしょう。

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