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自分のたいせつを信じるってむずかしいけれど#誰かにささげる物語

ここにはいろんなくまがんでいます。みんなそれぞれ、もっているものはちがいます。ほしをもっているこ、チューリップをかせたこ、はな髪飾かみかざりのこ。

わたしは、チューリップを大切たいせつにしていました。自分じぶんあかいチューリップがだいすき。

ピンクの花飾はなかざりのあのこは、いつもわたしのチューリップをほしがりました。

「いいなあ!いいなあ!そのチューリップを、わたしはもってないよ!」

ピンクの花飾はなかざりのこは、よくいていました。

ほしがいい!」「ひまわりがいい!」「チューリップがない自分じぶんはだめなくまなんだ!」

自分じぶんのピンクの花飾はなかざりはきじゃないのかな。とってもかわいいのに。

「あなたの花飾はなかざりはすてきだよ」
「とってもかわいいよ」

みんながそういましたが、それもいやみたいでした。

「わたしは自分じぶんのことがきらいなの!」
「あなたにはこのつらさはわかんないよ!」

そうわれたわたしも、かなしくなりました。

だって、そのこを本当ほんとうきだったから。自分じぶん自分じぶんきらいなんていわないでと、こころのなかでおもいました。

でも、わたしがなにっても、つらいだけなのかもしれません。

だからそっと、贈り物おくりものをしました。ってもらえないかもしれないけれど、自分勝手じぶんかってなプレゼントかもしれないけれど、「わたしは本当ほんとうにあなたのことがすきだよ」と、精一杯せいいっぱい気持きもちをこめて。

かがみにうつった自分じぶんを、そのこはきそうなしずかにみつめていました。

わたしは、自分じぶんのチューリップもすきだけれど、ピンクの花飾はなかざりもだいすきだし、ほしもとってもすてきだとおもいます。

わたしは二人ふたりがもっているものをもっていないし、でも、だからこそ自分じぶんのチューリップはたいせつなの。

きていないし…」
「ずっといっしょにいられるよ」

家族かぞくはみんなもっているし…」
「わたしはもってないよ」

「やっぱりチューリップがかわいいし…」
「いっしょにそだてる練習れんしゅうをしようか?」

そのこはまだまだいたいことがありそうです。でも、はじめて自分じぶんのピンクの花飾はなかざりをちゃんとたみたいでした。

それからはすこしだけ、花飾はなかざりをほめてもいやがらなくなりました。そしてまえみたいに、がおをみることもほとんどなくなりました。


おしまい




***

うるらさんのとても素敵な企画に参加させていただきます。企画をありがとうございます。

最初はいつもどおり純粋にエッセイで書こうと思ったのですが、特定の人ではなく、特定の状況ではなく、なるべくやわらかい雰囲気を伝えたいなと思って挿絵をつける絵本形式にしました。

書いていて、表現する自分にも当てはまることだなあと改めて感じました。誰かの文章、言葉、小説、雰囲気、そういうものに憧れ続けてしまう自分はいますが、それに陶酔するあまりに自分の持っているものの輝きを信じる気持ちを忘れないようにしたいと思います。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。




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