poem 浜辺の涙
男がひとり
浜辺に立っている
遠い記憶
ぼやけた輪郭の父
少年はただ
見送った
荒く打ち寄せる波
時を急かすように
太陽が沈んでいく
あの時俺は…
遠ざかる父の背中
激しく波が打ち寄せる
堰を切ったように
男は泣いた
泣いた
泣いた…
誰にも知られまいとした
少年の記憶
届かなかった声
浜辺の闇が男を包む
波の音だけが
そこにあった
ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。