Siddhiについて ~Venki先生のRamayana Classより~
Ramayanaを原文から読むクラスでは今（2022/11/26現在）、Visvamitraというスーパー聖人が、幼き（12歳ぐらいの）RamaをDasharatha王から連れて行こうとするシーンです。
そこで紹介されているのが、スーパー聖人VisivamitraのSiddhiについてです。（細かい発音の話ですが、Siddhiはカタカナ表記でシッディとされる場合が多いのですが、、Siはシではなく、どちらかというとスィの音に近い、英語のseeまたはsitのSi、イタリア語スペイン語のyesの意であるSiの音です）
Siddhiは言葉的には「達成したもの」（धातुः =षिधुँ संराद्धौ दिवादिः + क्तिन् accompolished）と言う意味があるのですが、一般的には「前世のカルマや現世での修行・瞑想で得ることが出来る特別なパワー」として知られています。
超人的なパワーすべてを指すので、その現れ方は様々です。よくあるのは、手をかざすだけで病気が治せたり、空間を瞬間移動出来たり、息をしなくても3日ぐらい過ごせたりするものです。
Vishvamitraはそこら辺の聖人ではないので、このSiddhiを誰よりも持っていたそうです。その中にはシヴァ神から直接授かったマントラがあり、敵を倒す時に放つ弓矢に込めるとデーヴァターが宿り、敵を倒すことが出来たそうです。マハーバーラタにもカルナやアルジュナがマントラを使って戦うシーンが出てきます。
今でも沢山の修行者やヨーガをする人たちがこれらのパワーを求めて修行をしています。
そして、このSiddhiを得た人たちはヨーギーとして讃えられます。120歳まで生きたいとか、60過ぎてもきれいでいたいとヨガで鍛錬される方々はこの類に入るのではないでしょうか。
早寝早起き、お酒も飲まない、さらにヴェジタリアンの生活をされているのであれば、それだけでも素晴らしいヨーギーだと思います。
それはそれでよい事だと思うのですが
ヴェーダーンタの教えはSiddhiのためにあるのではない
ヴェーダーンタを勉強していると、この類の修行をしているのかと間違われることが多くあります。しかし、ヴェーダーンタの教えは何か特別なパワーを得るためのものではなく、逆に、それらの超絶パワーでさえも、限りのある体験世界のものなので、全く意味のないもの、むしろヴェーダーンタの知識を得るためには邪魔になるもの、として捉えられます。
ヴェーダーンタは
この体や体験世界などの、限りのあるものすべてから自由になることが出来る知識
を教えてくれているので、いくら超人的だとしても、限りあるものや体験世界でのパワーには価値を見出さないのです。ヴェーダーンタは限りのないものを教えてくれるのですから。
と前置きが長くなりましたが、ここからはVenki先生がクラスで教えて下さった、このSiddhiが知識を得た人にはどのように見えるのか、のお話を書きたいと思います。
1800年代に実在したRamakrishnaという聖人が居ます。ヨーガを世界中に敷衍したVivekanandaさんのグルにあたる方です。
この方が川岸で休んでいる際に、あるSiddhiマスター（超人パワーを獲得したマスター）が来てRamakrishnaに言いました。
Siddhiマスター「今この河の水面上を歩いてきました。」
Ramakrishna「おー、そうですか。そのSiddhiを得るのにどれくらいかかりましたか？」
Siddhiマスター「12年ですよ」（すごいでしょうと言わんばかりに）
Ramakrishna「12年もかけたのですか！私はこの川を5分ぐらいで渡りましたよ。ボート屋さんに15ルピー渡して」（なんて時間の無駄使いをされたのでしょう。。。）
真実を知っている人は、いくら超人的なパワーだとしても、限りのあるものには価値を見出さない、ましてや時間や労力を使わない、という事が良く現れている会話だと思います。
ゴールの不明瞭さ＝時間の無駄使い
何事でもそうですが、自分が何を求めているのか分からないと、ゴールへたどり着くことは出来ないし、方法を選ぶこともできません。方法が分からないのでいろいろ試してみて、あれでもない、これでもないと翻弄し、時間と労力を無駄にしてしまいます。上のSiddhiマスターは12年も修行をして、Ramakrishnaが5分で渡れる河を渡れるようになりました。
何を求めているのかが分からないのであれば、先ずは何を求めたいと思っているのかをきちんと考えてみて、日々の時間の使い方や勉強の仕方をきちんと見極めて、限りある時間を有効に使うことがとても大事だと思います。
いろいろな超人的な話やSiddhiの話を聞いたら、なんとなくそれが魅力的に見えて、フラフラとそちらに行ってしまう事も多いのではないでしょうか。
インドではヴェーダーンタの教えをきちんと教えてくれる先生より、Siddhiマスターの方が多いと思うので、出会う確率も多いでしょう。
見極めのある人が、限りのある体験世界での限りのあることへの探求に見切りをつけ、限りのない真実へと舵を切ることが出来ますように。
शुभा भूयात्
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