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【宗教2世ごろごろケア日記01】ごろごろケアのおはなし


 NHKで不定期にやっている番組「ごろごろパンダ日記」が好きで、いつも見てしまう。

 むこがわさんは、兵庫県民なので、小学校のころから遠足やら何やらで神戸の王子動物園によく行っているのだけれど、そこにいるパンダのお話。

 「ごろごろパンダ日記」というタイトルは、めちゃんこやわらかいのだが、この番組の内容はけっこうハードで、27歳にもなる高齢パンダのため、心臓疾患が見つかって、命に関わるような状態になっている。

 この闘病の様子を、専属の飼育員さんやら、獣医さんやらが奔走して、なんとかしようとケアしてゆくドキュメンタリーだ。

 とはいえ相手はパンダなので、うまくいったり行かなかったりする。餌の笹ひとつとっても、その日の体調や気分で、食べたり食べなかったりするので、いろんなところから多くの種類の笹を取り寄せて餌場に出してみたり、薬ひとつ与えるにしても、どんな方法か試行錯誤が続く。さとうきびジュースが好きなので、それに混ぜてみよう!とかね。

 日に日に弱ってゆくパンダのタンタン。その名前ひとつとってもおもしろくて、動物園における公称名は「タンタン」なんだけど、パンダは中国からの借り物なので、飼育員さんたちは「本名」で呼ぶ。本名は「爽爽」。だから飼育員さんはいつも「ソウソウ!」と呼びかけている。

 飼育員さんたちや獣医師などのスタッフは、一生懸命だが冷静でもある。そして、前例のない飼育でもあるので、いつも試行錯誤だが客観的で分析的だ。データを取り、観察し、仮説を立てて検証する。

 検診のために、鉄工所の人と協力して専用の檻をつくってみたり、その檻にとりつける器具を常に改良してみたりもする。

 愛情を持って接しているけれど、猛獣でもある。爪ひとつとっても巨大で、一歩間違えばお互いにケガをする。


 そんなタンタン=爽爽とのやりとりは、いつも絶妙な距離感で、不思議な感じがするのだ。

 体調が激変して悪くなれば、そりゃあ飼育員さんたちのメンタルもかなりやられるだろう。それでも冷静さと、どこか客観的な冷たさ(一定の距離)を保ちつつ、ケアに当たる様子は、テレビ越しにものすごく不思議な関係として伝わってくる。

 これは、番組を実際に見た人じゃないと、わからないかもしれないが、私はあの姿がとても好きだ。
 それはひとつの「仕事」でもあるけれど、飼育員さんたちにとって爽爽との時間は「一生のおつきあい」でもある。本当に不思議な距離感なのだ。

 お互いが人と動物だから、というのもあるかもしれないし、中国という国家を後ろに背負った借り物だからというのもあるかもしれない。公的動物園における仕事だからというのもあるかもしれないし、愛玩動物やペットではないのだから、踏み込んではいけない領域みたいなのがあるのかもしれない。


 さて、最近、むこがわさんは「宗教2世」がらみの発信が増えているのだけれど、この「宗教2世」という存在とのおつきあいが「ごろごろパンダ日記」に似ているなあ、と思っている。

 むこがわさんは一応、2世の当事者だが、かなり前に当事者は卒業して、ケアする側に回っている。

 宗教2世の当事者のみんなは、ぶっちゃけ大病を患っていて、心がかなりやられている。でも、そのケアの方法は、まだまだ手探りで、有識者の中においても、まだ「これだ」という王道なんてものはない。

 共感と支援と、情熱と冷静さと、愛情と冷たさ(引いた目線)を全部織り交ぜながら、ケアは進んでゆくのだろう。

 なので、この連載では「宗教2世ごろごろケア」と名づけてみた。

 まあ、たいした難しい話は書かない。当事者でも支援者でも、ごろごろしながら読んで、ごろごろしながら受け止められるようなスタンスで書いていこうと思う。

 そして、ケアが必要な宗教2世の子たちが、ごろごろしながらゆっくり元気になってくれることを望んでいる。

 そういうお話を、書いていくね。


(つづく)
 

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