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「春になったら苺を摘みに」梨木香歩 著(新潮文庫)

【春になったら苺を摘みに】
《梨木香歩 著》(新潮文庫)
             
       
『西の魔女が死んだ』を読んでファンになった梨木香歩さんの処女エッセイ。
       
『西の魔女が〜〜』の主人公まいと梨木香歩さんを同一人物だと思い込んでいたが、そうではないのかもしれない。しかしながら、“西の魔女”のモデルはウェスト夫人なのではないだろうか。そんなことを思いながら読み進める。名前が“ウェスト”夫人であることも私の想像を加速させた。
       
       
当たり前のことだが、英国滞在時のお話であるため、人名や地名がカタカナで語られる。読み進めるにあたり若干のエネルギーを必要とした。
(そういう意味では、ドフトエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読みきったことが、アタシの読書人生最大の快挙であると言っても過言ではない)
       
       
梨木香歩さんは文中で『子ども部屋は単なる子どもが生活する場所というよりも、人が自分自身を創り上げようとするときの人目をはばからぬ試行錯誤の場であるような気がする』と語っている。  
       
貧しいながら、私にも自分の部屋を与えられた時期があったことを思い出した。(思春期の頃、2年間だけだったが)
音量を最小まで絞り、深夜ラジオを聴いた。秘密の日記を綴った。自ら喘息の発作を起したのも此処だ。鏡に向かって自分の顔をマジマジと眺めては語りかけたりもした。
自分を創り上げようと必死に試行錯誤を重ねているアタシが目に浮かび、エールを贈りたくなった。

「理解はできないが受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続けるーー物語の生まれる場所からの、著者初めてのエッセイ。

「春になったら苺を摘みに」裏表紙より

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