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夏に思い出す、カラフルなゼリーとメガネの可愛い先生。

小学校の頃、両親が共働きだったため、僕は学童保育に通っていた。
授業が終わった午後に学童保育のある施設へ行き、夕方までのしばらくの間、先生のいるその場所でみんなと遊んだり本を読んだりして、その後に帰るって制度だ。
(少子化の昨今、現在もあるのか不明ですが)

それで夏休みになると、学童保育は朝から通う事になり、宿題を持ってそこへ通っていた。
とは言っても、宿題は全然やらないので意味は無いのだけれど。
一応、ちびっ子にもポーズというかカッコ付けというか、親や大人へのアピールというか、そういうものがあったのだ。
確か夏休み中は9時半ごろから開いていたかと思うのだけれど、記憶が定かでない。
ただ僕の場合、父親の会社がその場所から近かったというのもあり、夏休みは父親の通勤時間に一緒に学童保育まで行っていた。
だから僕だけ1人、他の同級生達よりも早く来ていた。
確か、9時よりも早い時間に行ってたと思う。

正直そんな子供、学童保育の先生からしたら面倒だと思うのだけど、その時の先生は優しく受け入れてくれた。
その学童保育に居たメガネの優しい女性の先生がいて、僕は彼女がとても好きだった。
僕の眼鏡っ子好きは、その当時からあったのだ。
(と、今書いていて思った)
メガネでちょっとぽっちゃりした優しい先生で、僕はその先生と仲が良かった。
僕のぽっちゃり好きは、その当時からあったのだ。
(と、今書いていて思った)

その先生はお菓子作りが好きで、その教室にちょいちょいクッキーを焼いたりお菓子を作って持ってきてくれた。
その先生はいつも、楽しそうな、いい事教えてあげると言いたいような、そんな顔で「今日もお菓子作ったよ」と教えてくれた。
そしてその日は、大きなボールに作ったゼリーを持ってきていた。
ゼリーは何層かになっている、数色のカラフルなゼリーだった。
僕は先生と、そのボールを裏返してお皿の上に半休状になったゼリーを取り出し、小さく切り分ける手伝いをした。

その時に先生が「一緒に味見しようか?」と言ってきた。
僕は真面目で、みんなより先に食べることへの罪悪感を抱いていた。
モジモジしていると、その先生は笑顔で僕に一口食べさせてくれた。
それは、イタズラっぽい可愛い笑顔だった。
僕より全然大人だったけど、子供みたいな笑顔で笑う先生だったと記憶している。
将来こういう女性と結婚したいなって、小学生の僕は真面目に思っていたのだった。
「美味しい?」と先生は聞いた。
「うん、美味しい」って僕は答えた。
でも本当は、味が薄すぎて全然味がしなかった。
それは、二人だけの秘密に緊張していたからか、本当に味がしなかったのかは覚えていないんだけど。
(おそらく後者だった)
味がしなかったこのゼリーの逸話は、僕にとってそれはそれは甘酸っぱい思い出となったのだ。

夏の暑い日になると思い出す、小学校の頃の好きなシーンの一つだ。
当時の夏って楽しくて色んな思い出があったのに、大人になると何故だか暑いだけの厄介な日々になる。
でも何か小さな一つでもいいから、あんな風な甘酸っぱい思い出を作りたいものだぜ、と思う。
そして随分と大人になった今でも、些細な事でも楽しめる気持ちを持った、あのゼリーを作ってくれた先生のようになりたいものだぜ、と思っている。


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