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『重版出来!』を読んで①

最近、漫画「重版出来!」の新刊15巻が発売されたので読みました。

せっかくなので1巻からじっくり読んだんですけど、これ本当に良い漫画だと思うんです!大好きなんです。とっても面白いし!

テレビドラマにもなったし、読んでる方も多いかもしれませんが、「重版出来!」は漫画編集部に属する黒沢心を主人公として漫画・出版全般のお仕事を描いたお話です。編集のお仕事、出版のお仕事を知りたい!と思う人にはこれでもかというくらい丁寧な描写が綴られているので読んでいてワクワクすると思います。

この漫画って、編集者黒沢心の編集者としての成長物語であると同時に新人漫画家中田伯、同じく新人漫画家の東江絹、有名漫画家の娘の後田アユがどうやって育っていくかを軸としていると思います。それと同時に出版業界の変化という大きな流れをバックに描き、過去(いにしえと言った方がいいかもしれません)の日本語から未来へと続く、言葉、文学、漫画、出版、様々なありようについて、本当に深い愛情をもって描かれていると思うんです。

おおざっぱに言えばそうですが、この大きな流れを描く熱量もそうですが、各1話1話で描かれるエピソードの数々がまるで、縦の糸に横の糸を織り込んでいくような、これもまた濃い(美味しい話や名言の)糸でもって織り込まれていき、全体にくっきり大きな素晴らしい絵柄が浮き出てきているような漫画だと思うのです。

もうちょっと詳しく話したいので、数回に分けてお話したいと思います。

1.仕事に対する熱意とリスペクト

社長、編集部、漫画家、書店の店員、営業部、製版所、DPTオペレーター、Webコミック事業部、アシスタント、持ち込みをする新人、カバーデザイン、グラビア撮影、印刷所、資材課、企画課、倉庫、校閲、バイク便、3Dフィギュア、付録、フォント、映像メディア部、脚本、舞台化の主演、カメラマン、電子書店、Web制作会社…旅行アプリ会社、デジタル局、ブックカフェ…

書き出してみました。漏れがあるかもしれないですけど、これだけの仕事について、サラっとではなく、本当に敬意をもって描かれていると思うんです。生の現場の声をそのまま聞いているよう。もう、本当に仕事に誇りと熱意のある方々がたくさん出てきます。

これは舐めただけでどんな種類の紙か分かる制作局の人です。凄くないですか?ここまで来るのにどれだけの時間をかけて、どれだけ多くの種類の紙を触ってきたんでしょう。そして、それをひとつひとつ選んで作っている本。

紙だけではありません。色の出し方、フォントの決め方、書店で売る時の配置の仕方…どれひとつ手を抜かず、自分の出来るだけの手を打ちまくって仕事をしている人達の品質に支えられて出来た本を私達は受け取っているんです。

Web事業部を立ち上げてからもそうです。いかに素晴らしい作品を読みたい人に届けるか、どうやったら伝わるところに伝わるか、工夫に工夫を重ね、寝る間も惜しんで作られた、作り手と読み手にとっての愛のある架け橋を今、私達は享受しているのです。私達には見えないところで、どれだけの人達が頑張ってきてくれたんでしょう。

社長の言葉をここに記しておきます。これがきっと出版を巡る人々の良いモノをつくろうと思う源なんじゃないかと思うのです。

私は重版出来!を読んだときに一番最後にある【チーム重版出来!】のページが好きでしばらくぼーっと眺めていたりします。この本に携わった方々の名前が連なっているのですが知人がいるわけではありません。でも、ああこの人達が走り回って、きっと腹の底から気持ちを割って話してくれて、そしてそれをリスペクトしながらお話を作ってる松田先生がいたからこんなに面白いものが読めるんだなあと感慨深くなるのです。


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