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恋人とセフレであったもの

セフレであったものが私を最も傷つけたのは
「顔が好みだった」
「プロポーズしても良かった」
という元彼女への懐古である。

心臓にキリがぶっ刺さった感覚だった。
この私がこんなに好きなのに
どうしてその女は愛されて私は愛されないんだ。
恋愛は努力でないと理解していたけれど
平気なふりをして飲み込んだ安酒は苦かった。

ハリーウィンストンしか許さない私は相手がそいつなら安物のティファニーを許しただろうか?否。しかし。

なんで、私じゃないんだろう?
そんなに、私は可愛くないのか?
みんなが可愛いという私はダメなのか?

他人と比較しても仕方ないのに
痛くプライドを傷つけられた。

一会社員と経営者
普通の港区女なら経営者が好きだろう。
私はきっと思い出に恋をしていたのだ。

話が矛盾するようだが、
セフレと別れた10時間後に交際した男は
とにかく人が良い。顔も良い。
一緒にいると自己肯定感が上がる。
まっすぐ容姿を誉めてくれるところも
自分を取り繕わずに笑えるところも好きだ。
趣味も怖いくらい合う。

重い女にはなりたくないが多分、おそらく、すごく好きだと言っていい。浮気されたら確実に泣くし、数ヶ月以上立ち直れない。

セフレであったものとの最後の朝、
電車内で私たちは違う方向を向いていた。

彼の瞳には窓の外しか映っていなかった。そいつの青色のマフラーが妙に恨めしくて、椅子に私だけ座らせて離れていく姿が暗示にすら思えた。

横断歩道で極めて軽く別れた時、強がって
「いつか私の魅力に気づくと思う」と笑った。
結果、最後になった。
二度と会わないだろう。会いたくない。
勝手に結婚して、勝手に生きればいい。

数時間後に出会った男が私は好きだ。
やけくそではない。何時間も、正確には24時間以上、喘息持ちの喉を痛めながら真剣に知ろうとして好きだと思えたのだ。

セフレたるものは、自己肯定感を下げ
無価値な気持ちに陥れる「毒」だ。

自分と付き合わない男はいらない。
自分の魅力がわからない男はいらない。
自分を惨めにする男はいらない。

彼氏は良い。
仕事が忙しくても無印良品で枕を買い、
苺が好きだと言えば覚え、
まっすぐな愛情を向けてくれる。

セフレなど向いていなかったのだ。
初めからそんな存在になりたくなかった。

私を大事にしてくれる男を幸せにしたい。
成功させてやりたい。
価値に気づいてくれたから。

私の価値に気づかず、
長年の真剣な好意を知りながら
最後まで利用した男は起業に向いていない。
他人に向けた不誠実は必ず戻ってくる。

私が起業して勝ってやりたいくらいである。
いいや、勝ってやろうじゃないか。
私は負けず嫌いなのだ。

港区女子が経営者と交際する。
ありがちな展開だが、悪くない。

渋谷区へ向かうタクシーに揺られながら
これで良いと思った。

港区女子は失恋なんて決してしない。
精神的に好きだと勘違いしていただけだ。

二度と会ってなどやるものか。
代替え品のある部品なら、
代替え品を使えばいい。


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