坂爪圭吾さんの文章を読んだら離婚して再婚してた。
私は面倒で単純かつ感化されやすい女であり、
メンヘラヤンデレのデパートだ。
『転職しよう。離婚しよう。人生はヤったもん勝ち。』の中で「27で結婚し、昨年29の秋に離婚した。今年のはじめに再婚した。」
と自信満々に記載したが続きがある。
31の春に離婚し、31の初夏に再婚した。
それも元夫の友人と。
私と元夫の間には色々と噛み合わない部分があり、天文学的な回数の喧嘩をしてきた。その中で「俺の友達とも仲良くしたほうが良い。君は社交性に乏しすぎる」と出会ったのがKだ。
私はKがもろもろの誤解から嫌いだった。
家なし生活を(かつて)していたらしく、他人の家をわたり歩き、掴みどころがなく、音楽をやっていて、妙に核心をついた嫌な質問をしてくる男。それがKだ。
仕事が絶好調で一番を目指し出すと
「なんのために稼ぎたいの?」と聞いてきて
お金ってなんで必要なんだろうと一週間以上考えて、なんだか自分が小物に見えてきた。
猛烈に悔しくなって布団にダイブした。
色々あって誰にも相談できない事態になったとき話そうと思ったのはなぜかKだった。Kであれば一般論でごちゃごちゃ言わずに話を聞いてくれると思った。
「オンライン懺悔室とかKはしたらいいと思うよ」私はいきなりLINEをした
「どういうことだ」と聞かれたから
「人にはにっちもさっちもいかないことがある。まあ、また話すよ」と返した
一ヶ月と少しして私たちはフェリーにいた。元夫とその知人たちと佐渡に行くためだ。
轟音が響くフェリーの車寄せでKが私に話しかけた
「前に話していた懺悔ってなに?」
「後でね」と私は言った。
Kが覚えていたことに驚くと同時に、私は佐渡で永遠と話すか悩むことになる。
三日目の夜にお酒を飲みながらゲームをしていてKがこう言った
「風俗は立派な仕事だ」
ハッとした。はじめて救われた気持ちになった。自分の風俗職歴を認められた気がした。もう何かを隠して生きるのは嫌だった。
いいなあ、と思った。
『転職しよう。離婚しよう。人生はヤったもん勝ち。』経営者AへのアンサーがKだ。
ああだこうだしている間に帰りのフェリーになった。元夫とKは雑魚寝をはじめて。私は諦めて横で読書をしていた。
「まあ、仕方ない」
Kは私の話を聞く義理もなければ私も話さなくても良いのだから。
30分後、Kが起きてコンセントはないか私に聞いて、探しに行くことになった。
「ところでさ」
エレベーターの中で私が口火を切った。
Kは目を見開いて大爆笑した。呑気すぎる笑いだった。私は笑って欲しかったんだなと気づいて安堵した。
というわけで、我々は売店の横のスペースで話した。Kは酒を飲んだ。下船アナウンスまで永遠に話していた。
私はKに対してその旅行を通じて、人間として好感を持った。それから我々はたまに連絡を取り合うようになった。
グアム旅行中に今後の夫婦関係や人生について徹底的に悩んでいた私にKは大学時代から10年以上読んでいるという 坂爪圭吾さんのnote と過去のブログの存在を教えた。
「暇があれば」
とたった一言で送られてきた文章のすべてを私は海岸や部屋で5日間ほぼ徹夜で読むことになる
うめいたり、絶望したりした、自分が嫌になったり、好きになったりした、しんどくなったり、嬉しくなったりして、一人グアムの海でもがいた、そしてKと一緒にいたら楽しいだろうなと思った。
Kみたいになりたかった。自由なKが羨ましくなった。都内のタワマンで何不自由なさそうで、なぜか不自由しながら暮らしている自分が嫌になった。
決定的な危機感を与えたのが匂いの合コン『臭活』に参加するというKの発言だ。
そのときばかりはグアムから「坂爪圭吾(さん)おのれ」とうめいた。
私は臭活当日に新幹線で熱海に行き、Kと臭活が終わってから会うことになった。これでKが女の子とホテルに行くのを食い止めることができたわけだ。性悪女はどこまでも体をはる。なりふりをかまわない。
翌日、元夫に離婚すると言いきってKの部屋に転がり込んだ。「勝手にどうぞ」という姿勢だったので、ゴキブリのごとく棲みついた。一歩たりとも動いてやるかと思った。
みるみるまに化粧品がKの部屋に溢れた。花が飾られて、女の子っぽいものに部屋が侵食された。
Kは私の常識はずれな暴走に諦めた様子だった。
そして坂爪圭吾さんという人に
会いに行くことにした。
「元夫の友達を好きになりましたが付き合っていいと思いますか? 罪悪感、罪悪感というのも悲劇のヒロインぶっていて良くないですが、なんだか良くない気がして」
「シンプルでいいよ。過去はあなたが好きだったけど、いまはあなたの友達が好き。それだけ」
そんなことを坂爪さんは言った。
ふーん。そっかあ。と思った。
仕方ないよなぁ。うん、仕方ない。もういいや
人見知りの私がここまでしたのだ
後に引くわけにはいかなかった
そのままKにお試しでいいから付き合ってくれと押し倒す勢いでつめより、気づいたら婚約していて、気づいたら結婚した。
Kは呆れを通り越して笑っていた。楽しかった。
色んな人が驚いたり、カンカンに怒ったり、説教をはじめたりしたが仕方ないじゃんと思った。
ずっと歳をとりたくなかったし、子供もほしくなかったけれど、そういうのもいいんじゃないかなと思う。Kと二人だったら楽しくても困っていても、笑えて面白いと思う。
本当に『クソ女』である
色んな人に失望され、軽蔑された。
だからなんだっていうんだろう
その後、坂爪さんから「いま近所にいる」とLINEがきて(ずば抜けて図々しい私は恩だとかキューピッドみたいな存在をスッカリ忘れていた)むくりと昼寝から起き上がり「そうえば結婚しました」と返事をした。
坂爪さんもきっと笑っていた。
坂爪圭吾さんの臭活に関するブログやnoteを読むたびに、舞台裏で大暴走した自分を思い出す。
いまから札幌に行く
地面をみたら満点が落ちていた。100点満点だ。
失敗したり、怒ったり、泣いたり、もがいたり、ゲンキンだから単純に喜んだりするだろうけど。きっと上手くいく。一般人にはなれない。ならない。
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