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白夜があれば極夜もある。

「明けない夜はない」

シェイクスピア四大悲劇のひとつ「マクベス」のなかでマルカム王子がはなった言葉。マルカム王子はマクベスに父親を殺され、復讐を果たさんとする人物。
この台詞には、マクベスを殺さねば夜は明けない、だがその時は必ず来る、というマクベスの固い決意が込められている。

The night is long that never finds the day.

この和訳はさまざまで、上記の「明けない夜はない」の他に、「どんなに長くとも夜は必ず明ける」「朝の来ない夜はない」「夜明けの闇が最も暗い」などとも訳せる。

しかし、
明けない夜というものがこの地球上に存在する。

一日中太陽が沈まない「白夜」があるなら、その逆の一日中太陽が昇らない「極夜」という現象もある。

これらは地球が傾いた軸を中心に自転していることにより起こる現象。

参照:環境省 南極キッズ-白夜と極夜

極夜の期間は対極、つまり北極点や南極点に近ければ近いほど長い。

北極圏では12月下旬から極夜がはじまり、フィンランド最北部ウツヨキでは約2ヶ月、北緯78度55分のニューオルスン基地では約4ヶ月続く。

極夜世界では月が昇るのが1ヶ月のうち20日間であり、月明かりでまともに視界が得られるのが満月前後の約1週間。

月の出ない新月前後や天候の悪い日は、一日中暗黒の闇と化す。

ただでさえ過酷な環境の北極圏で、あえて更に厳しい極夜にグリーンランド北部を犬1匹と一緒に単独旅をした狂人がいる。

GPSも無いなか六分儀を吹き飛ばされ、備蓄した食料は白熊に荒らされ、月に惑わされるなど暗黒の世界で生死に関わるトラブルに何度も見舞われながら、4ヶ月ぶりに昇った太陽を見た時、著者はなにを思うのか。

ノンフィクションだよ!
面白すぎて一気飲みしちゃったよん!

恐らく人類のほとんどが経験することのない4ヶ月もの夜が続く中、著者の精神が次第に削られていく様や、荒れ狂うブリザードの中で食料も尽き猟銃する獲物も見つからず、絶体絶命のシリアスな状況のなか突然「今それ考える!?」と突っ込みたくなるようなアホな妄想が繰り広げられるなど、読んでいて退屈する箇所が全くなくて、めちゃくちゃ面白かった。

「これ本当に生きて帰れるの?でもこの本を書いたってことは生きて帰れたんだよな・・?頼むからどんなに食料が尽きてもマジで犬だけは食わないでくれよ!!」と思いながら読んだ。

この本を開けばそこはブリザードが吹き荒れる北極。暖かい部屋でコーヒーを飲みながらぬくぬく読んでるのが申し訳なくなるくらい、迫力と緊張感のある作品でした。

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