BOOK JOURNAL No.1〜「雨上がりの川」〜

「雨上がりの川」

森沢明夫著  2018年10月25日 発行 幻冬舎

あらすじ

春香がいじめに遭ったことをきっかけに、ぎくしゃくし始める川合家の日常。そんな一家の前に現れたのは……。

少女の小さな嘘が生み出す奇跡の物語。ラストは感涙必至!







あと少し、ほんの少しで、幸せに手が届くはず――。



川合淳、妻の杏子、娘の春香は、平凡だが幸せな暮らしを送ってきたはずだった。しかし、春香がいじめに遭って部屋に引きこもり、一家に暗雲が立ち込める。現状を打破するために、杏子が尋ねた「ある人」とは――。当たり前の日々は取り戻せるのか。ベストセラー『虹の岬の喫茶店』『あなたへ』で人気のヒューマンドラマの名手が贈る、感動の家族小説!

Amazon書籍紹介より引用




感想

森沢さんの作品は全て読んだと思っていたが、先日新しい土地の図書館に行った時、知らなかった一冊を発見。

「え…!!!?これ知らない!うわっ嬉しい…!」

とひとりごちて、すぐさま手に取り適当な椅子を見つけて座り、読み始めた。



暫くして眉間にシワを寄せ、ドキドキと緊迫感を持って読んでいる自分に気がついた。


森沢さんの著書は、温かで心温まるサクセスストーリー。終始やさしく、ワクワクしながら読む本が大半だけれど、唯一、胸をえぐられるように苦しくて悲しくて、

(ちょっと今の私にはとてもじゃないけど読めない)

(これ、本当に森沢さんの作品なのだろうか…)

と感じた本がある。
それは、

【ぷくぷく】

という本。

生物形態の違う“ふたり(ひとりといっぴき)”の生活。いつもふたり、想い合って孤独な中でも共存して居たけれど、ある日を堺に、“いっぴき”の片思いに変わる。


『振り向いてほしい。…でも、どんなときでもあなたの味方だから』

無償の愛を一方的に送り続ける、本当は気づいて欲しい想いに、わたしの、母へひたすらに送り続けた愛、見捨てられたくないという恐怖心と自らの“心の殺傷”を繰り返してきた日々が重なり、どうしても耐えられなかった。

これは、読んだ時期にもよるのかな。

今あらためて読むと、心がジクジクと湿った梅雨に打たれるだろうが、以前のように辛くてどうしようもない、という事はないだろうと思う。


今回の【雨上がりの川】も【ぷくぷく】と似ていると感じた。

ストーリーが似ているのではなく、私の心の反応が、似ていると判断したという意味だけれど。



けれど今回は、結末に向かうに連れ、厳しい冬を超え訪れた北国の春の陽光のような優しい感覚があった。

わたしが以前と変わったからなのかな。

不思議。本は読み手の状態によって受け取り方が変わるから、面白い。

手に取った人の人生のステージの変化に伴って感じ方が違い、読み返した時に新しい発見がある。



春香は学校でいじめを受けた。

心に深い深いキズを負った。


けれども、そこから色々な体験をし、物語の後半で彼女はこう語った。

〝人には事情がある。 いじめる側にも何かあったんだ〟


いじめを受けて、まだ10代の子がそんな風に考える。

わたしは、周囲の攻撃を受けて、そのように考えられなかった。


わたしが春香と同じように考えるようになったのは、他にたくさんの挫折と経験を浴びるように与えられてから、22歳くらいの時だった。



それまでは たいそう憎んだ。



庭でアルバムや写真や、その時の記憶の何もかもを消そうとして燃やした。

ただただ乾ききった無表情、無感動の自分が穴を掘り、かと思うと、突然情動に火が付き、狂ったようにビリビリにその諸々を破き、そしてまた、ただ静かに火を付けては焼き、その作業をマシーンのように繰り返した。

ぼーっと眺めた。



どうしようもない激情に生かされていた日々が続いたが、苦しいと言う言葉では到底表せない経験をし、わたしの魂に刻まれた信念がある。

〝{どんな人にも100%の子どもの純粋な光}を見る〟



犯罪を犯した人。

そのバックグラウンドを辿れば、誰しもそうなる可能性は十分にある。

わたしがその人だったら。
荒んだ子供時代を過ごし、孤独で孤独で、虐げられ、殺される思いをしたなら。。

犯罪を許す訳では無い。

ただ、その行為と「魂」とは違うのだと思う。


例えば身近な、日常生活で考えると、
怒り散らかして周りが不快に思うような人でも 

(相手は何か育ってきた環境に影響を受けているのではないか/または栄養状態が悪いのでは?)

(もしわたしがその人の立場だったら同じようになるかもしれない)

と考える。


【純粋無垢な光を視たいと願うように生きる】

春香もきっと同じように考えたのかな。


いつも思うけれど、作家さんは自分では経験したことのない経験をした人の心の詳細を描く時、取材をしているのかな? 自分が経験したことのないことはその気持ちに共感し、理解しようとする事はできるかもしれないが、解らないものだとわたしは考える。あくまで想像に留まるだけだと。


取材したところで難しい…
取材をしていないなら尚更 信じられないくらい…



何でもお見通しの、宇宙の欠片を胸のうちに飼っているのかな。


今回の作品、結末は、何だかホッとした。

中盤は、

【母子カプセル化】

しているかと自分の経験と重ねてドキドキしたけれど、違ったみたいでなんか嬉しい。春香賢い。


春香にエールを送った読者は数知れず居るだろうな。

森沢さんが生み出すキャラクターは、みんな狂おしいほどに愛おしくて、応援したくなるの。🌱…




言葉選び〜気に入った表現集〜

なぜだろう、その瑠美さんの声はどこか乾いていて、するりと私の心を素通りした気がしたのだ

繊細な思春期に痛めつけられた千恵子の心は、まだ充分に張り付いていて、目には見えない血をじくじくとにじませていたのだ。

だから職場での千恵子は、他人の発する何気ない言葉にも敏感に反応してしまい、その言葉の「裏の意味」を勝手に想像しては、ひとり怯えていたのだ。
〜職場での人間関係を上手に構築することなどできるはずもなく、
〜ひたすら心を消耗させ
〜自らを退職へと追いやった
〜ほぼ二十年もの間、転々と職を変え続けてきたのだ

わたしも同じ。

成育環境で自分の人格が否定されたり、子供が出せて当たり前のはずの感情を出せず、堪え続けた経験など。

そういったstruggleの影響は、
大人になってからそれが表面化してくる。

Setbackに繋がる重大な出来事にも。


千恵子の場合、いじめだった。わたしは家庭環境だった。

“仕事が続かない”
“何度も入退社を繰り返す”

一歩やっと進めたと思えば、また塞ぎ込み巨大な穴へ堕ちていく感覚。
こんな苦しい状況を想起して、千恵子の過去の傷についての描写を、なんとなくじくじくする胸を感じながら読んだ。過去はまだ清算できていないからね。

「過去の昇華」

これは私のメンターの先生のセミナーで今後何かしらあるようなことを仰っていたので、期待してリリースを待っている。辛い記憶をえぐる作業になるので予測のつかない緊張感もあるが、楽しみでもある。

高次脳機能障害、アルツハイマーになる人は、何らかの忘れ去りたい過去を背負っているという特徴があるそう。
潜在意識下で

「忘れたい」

と願っているから、実際に忘れてしまう。

思考は言葉であり、言葉は電氣信号だから、物質としての波を持つ。脳波は身体全てを包み込み、導かれる方へ顔を向ける。
 創り出したイメージへと向かう。

わたしという存在を求めて、じっと見つめ返してくる、濡れた黒い瞳と、その純粋な光。

〜胸のあたりがぞくぞくして、身震いしそうだった。まるで心臓のまわりを生ぬるい少女の指が這い回り、えも言われぬ甘美なタッチで愛撫されたような気分だ

森沢さんの言葉のセンスが私にはドンピシャなのだ。

何となく感じていた、モヤモヤと霧のように私の周りに散布された私では言語化出来ない繊細な部分を、森沢さんはexactly、言い現してくれる。

新しい言葉の使い方・森沢さんのオリジナルな表現が大好き。




P.S.

右脳さんが最近、サイバー攻撃を受け機能低下。
左脳さんによるものか。

ネドじゅん式エレベーター呼吸で取り戻すか😌


あと、いつかわからないけどベランダに綾鷹の空の2リットルペットボトルが落ちていた。

え。

投げ込める高さじゃないけど…

…横の住人!!?

犯人は近くに居るものである。

もしかして…  




じ、じぶ


 


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