見出し画像

『七月大歌舞伎 夜の部』の話

どうも、私です。
今日は、「今までで1番熱い夏の夜の話」をします。


いいもん見た。


お付き合い下さい。

大阪松竹座で上演される『関西・歌舞伎を愛する会 結成四十五周年記念 七月大歌舞伎』は、お祭りのようだった。


中村萬壽さん、時蔵さん、梅枝さんの襲名披露があるからだ。


姉「そして、仁左衛門さんも出演なさいます♡」

私「乙女なんよ」

仁左衛門さんは、夜の部で上演される『義経千本桜』に出演。
当たり役である、いがみの権太を演じる。

姉「絶対見たいけど」

私「圧。笑」

姉「いがみの権太、見たいけど」

私「だから、圧。笑」

と笑っていると、姉は言った。

姉「桟敷席に座りたい」

私「ついに」

姉「いろいろ試したい(?)」

というわけで、姉は桟敷席のチケットを確保。
母は今回、物語が難しそうとの理由で留守番となった。


また行こうね。


当日。
今回座ったのは、下手側の桟敷席。
舞台上の演技はもちろん見えやすいし、花道も近い席だ。しかも、横1列のみなので、演技や舞踊を集中して見ることが出来る。

姉「ストレスフリーで、最高かよ」

私「そうだね」

初めての桟敷席から見る『七月大歌舞伎』は、本当に圧巻だった。


※ここからは、ネタバレを含む感想になります。ご注意下さい。


『義経千本桜』




  • 涙腺大崩壊

今回上演されたのは、

『木の実』
『小金吾討死』
『すし屋』

という『義経千本桜』の三幕目で構成されている。


逃亡生活を続ける平維盛の妻・若葉の内侍(片岡孝太郎さん)と六代君(中村種太郎さん)、家来・主馬小金吾(中村歌昇さん)と居合わせた際、金をせびり取るという悪役らしい登場をするいがみの権太(片岡仁左衛門さん)。

若葉の内侍と六代君を守る為に、討死してしまう小金吾。

弥助と名を変えた維盛(中村萬壽さん)を匿い、彼とその家族を守るべく、小金吾の首を持ち帰る、権太の父・弥左衛門(中村歌六さん)。

権太を改心させたい、と厳しく接するつもりが、上手く騙されて、お金を用意してしまう権太の母・お米(中村梅花さん)。

維盛を弥助として愛していたが、妻子との再会の場面に出くわし、逃がすことにした権太の妹・お里(中村壱太郎さん)。

権太へのお金と、弥左衛門が持ち帰った小金吾の首が隠された2つの寿司桶。

お里が悲しむ姿を見て、維盛一家を追いかけつつ、寿司桶を回収するも、その中身が小金吾の首であったことから、父の賭けに気づき、自身の妻・小せん(上村吉弥さん)と息子・善太郎(中村秀乃介さん)を犠牲にする形で、維盛一家の命を救おうとする権太。

その男気に惚れ、小金吾の首を維盛の首として持ち帰る決意をし、褒美に陣羽織を与える梶原景時(坂東彌十郎さん)。

陣羽織に隠された数珠と源頼朝からのメッセージに、出家することを決意する維盛。

何も知らずに権太を刺してしまい、後悔する弥左衛門と息絶える権太。


というのが、大体のあらすじだが、役者の皆様の熱演もあって、客席は涙に包まれた。

姉「小金吾が死んだ後の弥左衛門、見た?」

私「ん?」

姉「幕が完全に閉まる直前に、小金吾に向かってもう1回刀を振り上げていたの」

私「見た!」

上手側や正面から見ている人達には、もう見えない位置まで幕が閉まる中、歌六さんはすでに振り上げていた刀を、下手側に座る私達にだけ見えるであろう位置で、さらに振り上げたのだ。

弥左衛門はこの後、小金吾の首を取ったんだ。

と明確に伝わるように。

姉「自分が客席全体から見えないであろう位置まで幕が閉まっていたら、気が抜けそうなのに、歌六さんはそんなことなく演技を続けていたのが、もう素晴らしくて」

私「分かる!」

姉「人間国宝だわ(?)」

私「さすが、人間国宝(?)」

ちなみに、私は、仁左衛門さんが花道から登場するたびに、


色気が服を着て、歩いている……!


と思っていたし、ここまで至近距離で仁左衛門さんを見たのも初めてだったので、私は南座で玉三郎さんの美しさに直面したときのように改めて実感していた。


片岡仁左衛門さんは、実在するんだ(?)


姉もまた、仁左衛門さんの放つ色気に頭を抱えていた。

姉「色気が凄い」

私「仁左衛門さん、実在したんだ(?)」

姉、私「ありがとうございます(?)」


『汐汲』



  • 夏を感じる舞踊物

蜑女苅藻(中村扇雀さん)と此兵衛(中村萬太郎さん)が見せる舞踊物。


とにかく、扇雀さんが美しかった。
そして、萬太郎さんが格好良かった。


恋人を想って舞う苅藻。

苅藻に恋をする此兵衛。

それをあしらう苅藻。

2人の駆け引きと繰り広げられる舞は、圧巻だった。
また、アクロバティックな舞もあり、花道での宙返りを見たときは、息を呑んだ。

姉「あんな狭いところで……!」

私「凄い……!」

ちなみに前述の歌六さんと同様、扇雀さんも物語の最後に花道へ戻るのだが、花道の幕が閉まるその瞬間まで舞を続けていて感動した。

姉「『義経千本桜』が見たくて来たけど、意外とよかった」

私「そうだね」

姉「扇雀さん、最高」

私「萬太郎さん、格好良い」

姉、私「ありがとうございます(?)」


『八重桐廓噺~嘔山姥』



  • 六代目 中村時蔵襲名披露狂言

と銘打っているだけあって、時蔵さんの魅力がいっぱい詰まった演目だった。


行方不明となった夫・坂田蔵人時行(尾上菊之助さん)の行方を探す、元は傾城だったが、今は紙衣を纏い、傾城の恋文を代筆することを生業としている荻野屋八重桐(中村時蔵さん)。

かつて時行が作った歌を唄う煙草屋の声に、不思議に思いつつ耳を傾ける八重桐を屋敷の中へ通す腰元お歌(中村萬太郎さん)。

中で待っていたのは、行方不明となった源頼光の帰りを待つ、彼の許嫁・沢瀉姫(中村壱太郎さん)と腰元達。そして、自分と同じように屋敷に迎え入れられていた煙草屋源七に扮した時行。

沢瀉姫に言われるがまま、時行との喧嘩話をし始める八重桐。

その中で、時行の仇を妹・白菊(片岡孝太郎さん)が取ったと知り、自身の魂を八重桐に宿らせると言い残して自害する時行。

頼光を追って来た太田十郎(中村雁治郎さん)達に立ち向かう白菊と、彼らを蹴散らしていく八重桐。


というのが大体のあらすじなのだが、終始、時蔵さんが美しく、また、時行の魂が宿った際に代わる声色の迫力が凄かった。
女性らしい可愛らしい声だったのが、男性らしい凛々しい声になるのだ。

そんな超大作の本作の中で、八重桐を屋敷に招き入れるときにお歌が言った、

お歌「紙衣、おじゃれ。煙草屋も、おじゃれ。紙衣も煙草も、紙衣も煙草も……。紙煙草、おじゃれ!」

の一言と萬太郎さんの女方の姿が、妙に面白くて、可愛くて、客席は笑いに包まれた。

姉「時蔵さん、やっぱり綺麗だね」

私「それ」

姉「菊之助さん、一瞬すぎたけど」

私「孝太郎さん、めちゃくちゃ強いし」

姉、私「ありがとうございます(?)」


終演後。

私「いかがでしたか?」

姉「『義経千本桜』は大号泣だったし、『汐汲』は思ったよりよかったし、『八重桐廓噺~嘔山姥』は時蔵さんの魅力大爆発だったし、最高」

私「さすが、襲名披露公演」

姉「全体的に熱かったよね」

私「彌十郎さんも、今回は悪役じゃなかったしね」

姉「確かに!」

私「いい人だったね」

姉「鎌倉武士は、熱いんだよ」

私達が見るときは、もれなく悪役だった彌十郎さん(?)が、今回は情に厚い鎌倉武士だったことに感動していると、姉は私を見て笑った。


紙煙草、おじゃれ!

これは、しばらく流行るぞ。笑



よろしければ、お願いします。 お願いします!!(圧