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激レア産業「精麦せいばく」 麦焼酎や麦味噌の原料や押麦ができるまで

「精麦=大麦を削る」とはどんなものかなど、検討もつかないと思います。今日はそんな大麦を削る仕事をご紹介します。

これまで工場見学された多くのお客様の感想No.1は、こんなに大変だとは思わなかったです!

皆さんもよく見かける押麦や丸麦。店頭などて何気なく見て、「ああ麦ね~。健康には良いみたいだけど。次に値段、そして、どれがいいのかしら?違いが分からないからこれでいっか。でも待って…。炊飯以外の食べ方が分からなくて使いきれないから、やっぱり買うのやめよ!」の繰返しではないでしょうか。

精麦工程
①原料選別
②搗精の工程
      1.削る   2.磨く
③コンディショニング
④異物除去
⑤製品のパッキング

それでは、大麦がどのように丸く削られていくのか見ていきましょう。工場内に一足踏み入れると別世界。想像を超えるスケール感。大麦が工場内を駆け巡る大きな音と振動は、まるで体内を巡る血液のような感覚で体の真まで語りかけてきます。

①原料選別

写真の大麦は「はだか麦」です。はだか麦は外皮と実がくっついていないので、手で擦るとツルツルとした実がポロンと出てくるので「はだか麦」と名前がつきました。皮と実は収穫の際に分離され、実だけが集められて出荷されます。そして、水分調整され、数々の検査基準をクリアした麦だけが精麦工場へと納品されます。これは国内外の全ての大麦に言えることです。原料サイロ投入前に異物選別をし異物除去を行います。

②搗精の工程

搗精の工程には「削る工程」と「磨く工程」の2つの工程があります。出荷されるまでの全てが大切ですが、ここがオペレーターの腕の見せ所です。

1.削る工程では製品の形を作ります。

2.磨く工程では製品の表面を磨き滑らかにします。

それではより詳しく搗精を見ていきましょう。

1.削る

削る工程は製品の形を作ります。大麦は砥石と網の間を何台も通し、少しずつ少しずつ丁寧に削っていきます。

少しずつ白くなってきましたね。

最終の搗精機。ほとんどの皮が綺麗に削れて澱粉質がきれいに見えていますが、表面はザラツキがあります。

次は磨きです。どうやって磨くかというと、熱と水を利用し、麦と麦を擦り合わせて表面の凸凹をなくし滑らかにしていきます。

削るときに発生する摩擦熱と、次の工程まで水を少し大麦に含ませて、麦と麦を磨きあいっこさせるんです。すると写真のような糠が出てきます。エンゲルという機械ですがこれも数台通します。

その後、水なしを何台か通ると写真のように表面がツルツルとした美しい丸麦が出来上がります。

様々の搗精技術を駆使して仕上げられた大麦は次の工程へと進みます。

③コンディショニング

コンディショニング(α化)
※α化しない場合もあります。

コンディショニングでは大麦に蒸気を吹きかけて表面をコーティングします。これは、殺菌効果、吸水速度の調整、汚水対策など様々な意味合いがあります。

④異物除去

異物除去です。この工程もとても重要です。標準的な製品の大きさは長さ約5㎜、幅約3㎜、厚み2㎜。1Lの重さは約950g、数は約31,000粒。1時間当たりの生産量は約3t

大量の大麦が流れる中から小さな異物を取り除くために、数種類の異物選別機や金属探知機を通します。ここでも細かな機械設定が要求されます。

こうしてできた製品は、品質管理室でチェックします。異物は人の目で一粒一粒のチェックを行います。慣れてくると、麦についた小さな汚れや異物も瞬時に見つけられるようになります。工場見学に来られたお客様が、そのスピードに驚かれたことを懐かしく思い出しました!

押麦は更に一工程加わります。まーるく削られた麦を内回転する大きなロールとロールの間に通して平たくします。だから押麦というんですね。

押麦の異物チェックも一粒一粒目視検査を行います。

⑤パッキング

こうしてできた半製品は再び異物選別や金属探知機を通り、計量されパッキングします。パッキングされた製品は定温倉庫に保管し、出荷のときを待ちます。

まとめ

大麦はとても地味な存在。食物繊維が玄米の3倍、白米20倍と豊富に含まれ、現代人の美と健康にもってこい!の農作物でありながら、見た目も地味だし良さがなかなか伝わらない。米のように主食になれない名脇役。

しかし、そんな大麦は現在でも世界中で栽培され、日本国内でもまだまだ各地で沢山栽培されています。そして、各用途に合った加工をしているのが精麦会社です。国内では約20社のメーカーがこのように大麦を加工し、麦焼酎や麦味噌の各メーカーに、麦ごはん用など食麦用に出荷しています。

日本の食文化の黒子役に徹してきた精麦メーカー。
世界でも珍しい精麦は香川県発祥とも言われています。工場見学されたお客様は、この小さな一粒に詰め込まれた手間隙と職人の技術に必ずといって良いほど感動されます。これまでは黒子役に徹してきましたが、この素晴らしい産業は一人でも多くの方に知っていただく価値があると思っています。

というよりも、無くなってしまうと発酵調味料の味噌も食卓から消えてしまうのです。麦焼酎が消えると晩酌のとき、選ぶ楽しみの一つが消えてしまうのです。麦とろご飯や牛タン屋さんの麦ごはんが食べられなくなるのです。

小さな一粒の大麦に技術と思いの全てを注ぐ精麦メーカー。是非、一人でも多くの方に知ってもらいたいと思います。

■株式会社高畑精麦
http://www.takabatake.co.jp/

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