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初恋の人はずっと好きな人

わたしの初恋は眼鏡をかけた男の子。
小学6年生から中学3年生まで4年間好きだった。

メガネをかけた彼は学校内で特にモテているわけではなく、友達に話してもなんで彼なの?と聞かれるぐらい、わたししか彼の魅力に気づかなかったのだ。みんな彼の魅力に気づかないなんて見る目がないなと思いつつライバルがいないのはよかった。

彼は周りの子とは少し違っていて、中学生ともなれば女の子で頭いっぱいの男の子がちょっかいをかけたり距離感が近かったりとか、そうゆう、あの感じ。
でも彼はチャラチャラしていなくて、普通に話すけれどなんか、あの、あの感じではなかった。

わたしは彼のことを書こうと思い、今書いているけれど彼のことが何もわからないし知らない。
おもしろくも表現できないから多分読んでいてもつまらないかもしれない。
4年間も片思いをしたのに、読書家で映画をよく見るという情報しか知らない。

中学を卒業し、次に彼に会ったのは成人式だった。
いつも直球に好意を伝えるわたしだが、彼のことが好きすぎるのか緊張して半径1mも近づけなかった。バリアを張られていたのか、金縛りにあっていたのかは分からないがとりあえず成人式を楽しんだ。
結局喋れず連絡先も知らないから、もう彼と会うことはないだろうなと特に悲しい気持ちにも切ない気持ちにもならなかった、仕方ないで終わった。

2番目の彼氏(ホストをしていた彼氏)と別れた時にわたしはとりあえず誰かと一緒にいたくて、地元の数少ない友達に連絡をして飲みに付き合ってもらった。
友達が友達を呼びなかなかの人数が集まった。
誰かと過ごす時間だけは失恋なんて余裕だと思った。
そういえば、あいつ呼んでみる?と1人の男友達が言い、彼は大人数の集まりなど参加するタイプではないからどうせ来ないだろうと期待もしなかったが、どうやら来るらしい。
わたしは今まで気にしていなかった髪型や化粧や服装なにからなにまで全部が気になり友達の会話が一切入ってこなかった。

数分後、彼が来た。
久しぶりの彼はメガネからコンタクトになっていて、彼のどこが好きなのかはわからないけど会えて嬉しかった、芸能人に会った気分になった。

学生時代わたしは全く可愛くなく、高校2年生ぐらいからお化粧を覚え普通に可愛い女の子になった。
この可愛さならちょっとは意識するだろうと変な自信が芽生えた。

彼はどうやらお酒が弱いらしくカシスオレンジだったか、そっち系のお酒を頼んでそれも彼らしくてキュンとした。
わたしがずっと片思いをしていたのを周りは知っているので隣の席にしてくれて、あの飲み会はわたしの人生の飲み会の中でいちばん神経を使った飲み会となった。
楽しかったが疲れた、全然酔えなかった。

そのあとはみんなでカラオケに行った。
みんな酔いがまわってるからなのか、20歳を超えているのに学生みたいなノリでわたしと彼を別のカラオケボックスに押し入れたのだ。
ナイス男友達!
だったけれど、基本誰かと2人の空間が大の苦手なわたしは若干気まずかった。
当時わたしは書店員をしていて、彼は大手の出版社から内定をもらったと聞いた。
読書家だった彼が出版社とは本当にすごい、わたしまで嬉しい気持ちになった。
そんな緩い話をしながら3分ぐらいで外にでた。
そのまま1時間ぐらい話していたい気持ちもあったが、個室に男女が2人で長時間いると変な誤解をされそうだったので出た。

その日をきっかけに連絡先を知ったけれど、彼はチャラチャラしていないので連絡をとることもなく月日が経った。

わたしは勉強と労働が好きではないので昔から勉強もできないし国語なんて大嫌いだった。
今でも読めない漢字は多いけれど、本を読む楽しさを知ってしまったから本を読んでいる。
読めない漢字はなんとなくで読み進めている、調べないから学ばないことをわたしは知っている。


わたしは彼におすすめの本を聞くのが好きだ。
もうひとり、小さい頃から妹のように可愛がってくれているふたつ上のお姉ちゃんから聞くのも好きだ。
この2人はわたしより圧倒的読書家でたくさんの本を知っている。
自分より知識が多い人の話はおもしろい。

彼からはじめて教えてもらった先生は、森見登美彦先生だった。
「夜は短し歩けよ乙女」が有名だと思う。
森見先生の世界観は本当に面白くてクスっと笑える表現や言葉のチョイスが天才だと思った。
それ以降、彼のおすすめ本は信用している。

わたしは結婚しているが、今でも彼のことが大好きだ。
それは前のような恋心ではなく、尊敬が大きいのだと最近気づいた。

彼とは付き合いたいとか、結婚したいとかは思ったことがない。
きっと、いや、絶対うまくいかないのが目に見えている。わたしのようなズボラで基本ゴロゴロしている女性を彼は好みではないだろう。


「花束みたいな恋をしたみた?」
「うん、3回見た」
「僕も2回見た」
「あれよかったね」
「うん、よかったね」

彼と今までした会話の中でこの会話がいちばん好き。
「花束みたいな恋をした」はいちばん好きな映画。

やはり結婚相手と好きな人は別だと思う。

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