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402号室

心霊系のお話なので苦手な方はお控えください。

わたしは霊感はなく、そちら系とは無縁の人間だ。しかしそんなわたしにも一度心霊体験をしたことがある。

昔付き合っていた彼氏とラブホテルに泊まった時の話。

廃れた都会というのだろうか、都会ではないが夜は呑み屋で賑わう街。少し歩くとビジネスホテルがひとつ、ラブホテルがふたつ建っていた。
ラブホテルは大きい建物と小さい建物があり、3000円ぐらい安い小さい建物の方をよく利用していた。

そのラブホテルは、入り口にいつも盛り塩があった。しかしラブホテルとは色んな事情を抱えた人が出入りする場所だからあまり気にならなかった。

部屋数は12部屋ぐらいだったか、いつも満室の時が多かった。
みんな安い方を選ぶよねと思いつつ、いつも402号室は空いていた。
いや、いつも402号室しか空いていなかった。
3度目ぐらいからいつもここだねなどと呑気に話していた。

402号室は、玄関を入り真っ直ぐ歩くとガラス張りの大きなお風呂、通路沿いの右側にあるドアを開くと左側にベッド、壁を挟んでお風呂と隣り合わせだ。右側にはソファやテレビなどくつろぐところ。


お風呂に入り、そろそろ寝ようかと思い目を閉じていたところ、お風呂からシャワーの音が聞こえるのだ。彼にシャワーの音が気になって眠れないと伝えると彼はその日疲れていたのかほぼ寝ぼけたまま大丈夫大丈夫と眠っていた。
嫌だなぁと思い、でもひとりで確認しに行くのもなんだか怖かったのでとりあえず目を閉じていた。

すると左側の足元からなんだかすごく視線を感じたが、確認するにも怖くて見なかった。
シャワーが気になってるせいでそう思うのだろうととりあえず布団に潜り目を閉じた。

眠りが浅かったのか、夢を見た。
そこのホテルのお風呂に彼と一緒に入っている夢だった。
ガラス張りの向こうから首のないスーツを着た男性と髪の長い血だらけの女性がガラスに張り付いてこちらを見ているところで目が覚めた。
もう、怖くて動けなくなったわたしは彼にしがみつきながら朝が来るのを待った。
その間に熟睡でき、普通に朝を迎えた。

朝になると安心して、色々気にしすぎたのだろうといつも通りなにも怖くなかった。

朝の9時ごろに帰宅して荷物を整理していた時、いつも持ち歩いていた鏡がひどく割れていたことに気がついた。
わたしは三つ折りタイプのクッションカバーの鏡を持ち歩いていた。
クッションカバーなのと三つ折りタイプでなかなか割れない鏡だった。

鏡が割れるってなんだか不吉だなと思い、テーブルでコーヒーを飲んでいた父に割れにくい鏡が割れていてなんかすごく嫌だと言った。
父は、早く捨てた方がいい。鏡は自分の身代わりになる役目を持っているから麦ちゃんのなにか危険なことから身代わりになってくれたんじゃない?
か、普通に割れちゃったかと笑っていた。

わたしは昨夜の事を思い出した。
いつも同じ部屋なことにも違和感があり、ホテル名と部屋番号をネットで調べたら、なんと昔男女が無理心中をしたという事件がでてきた。
女性はベッドで血まみれ、男性は玄関で首を吊っていたと。

鳥肌が立ちすぐに彼に連絡し、とりあえず塩を振った。それ以外どうしようもなく何事もないことを願った。
しかし鏡のおかげなのか、幸いその後もなにもなく生活できた。

それ以降わたしはラブホテルという場所が怖くて絶対に行かなくなった。

知人の心霊話はみんな作り話だろうと思って聞いていたが、自分が実際体験して自分でも信じられないぐらい妄想や錯覚ではないかと疑うこともあるが、本当に心霊体験なんて生涯で一度もしたくなかった。

気がいいところにしか行くべきではないと学んだ。

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