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料理が好きだ

突然だが私は料理が好きだ。料理が好きになる理由は人それぞれだろう。一人暮らしをするにあたって、どうしても覚えなきゃいけないから、やっていたら好きになったという人もいれば、小さい頃から好きな人もいる。私の場合は後者で、私が通っていた保育園は今考えればちょっと変なところで、子供に包丁を使わせてくれていた。例に洩れず私も幼児性健忘の後遺症で、保育園年長ぐらいからの記憶しかないのだが、野外テントを張って他の子達と一緒に野菜の皮むきをピーラーでしていた記憶がある。その時はただ漠然と「大きくなったら包丁で皮むきするんだ!!」と思っていたのだが、大人になった今でも包丁で皮むきはできない。つまり、幼少期からその兆しはあったわけだが、「自分は料理が好きだ」という意識を特に持たないまま育つことになる。これには、いくつか理由がある。まずはじめに子供に料理を始めるとしたら何から教えるだろう?普通は安全管理の視点から「野菜を切る時手は猫の形にする」だとか、「ガスの火は鍋底をはみ出さないようにする」など、言語形式での指令が多い。私はあまり人と関わるのが好きではなかった。誰かに教わる側になるということはつきっきりで何かしら指導されることになる。よく体育の先生のせいで体育が苦手になった人がいると聞くが、私は人から「料理を学ぶ」という感覚が肌に合わず、結果的に料理そのものに対して苦手意識を抱いてしまった。

その後も特に自分が料理が好きだと自覚することなく数年間過ごすことになる。加えて、母が料理が苦手だったこともあり、身近に料理が好きな人間が一人もいなかった。そのことが影響して自分の中で「料理=めんどくさいもの」という方程式が完全に完成されていた。

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